自社の魅力をコピーで表現
基幹システムの開発や上流工程のコンサルティングを行うG社ではリスティング広告を実施することとなった。リスティング広告の出稿にあたっては、広告の性格上、短いメッセージで自社の魅力を訴求しなければならない。そのためコピーを検討することになった。
実はG社、振り返ればいままで真剣にコピーを考えたことがない。長い文章やしっかりとした提案書で自社の強みを訴求したことはあるが、ショートメッセージでいわゆるキャッチコピーのようなものを検討したことがなかった。
そこで、過去の展示会や営業資料のコピーを掘り起こしてみることとなる。資料を机に広げ、皆でブレインストーミングをしながら、コピーの候補に挙がったのは下記のようなものだ。
- お客様にワンストップでトータルサービスを提供する…
- お客様の満足度を第一番に考える…
- あらゆるご要望にすばやく応える…
業界内では大手のG社は、大手だからこそ総合力が強みだ。逆に言えば、なにかひとつのテーマに特化した強みがあるわけではない。そのため、総合力を押し出そうとすると、なんとなく当たり障りのないコピー案ばかりとなってしまった。
さらに、コピーを短くすればしようとするほど、網羅的になりすぎてなんのことをいっているのか分からなくなってしまう。メッセージの個性も乏しく、競合他社に置き換えてみても同じことが言えるのではないか? というような内容になってしまった。
コピーを考えるだけで、さっそく行き詰ってしまったのだ。
Webサイトはじっくりと見てもらえる媒体か
議論が煮詰まってくると、「本当にコピーは必要なのか」という意見も出てくる。Webサイトは他の媒体に比べて、じっくりと見てもらえる媒体であるから、無理にキャッチコピーを練る必要はないのではないか、という意見だ。
確かに、WebサイトはTVCMや雑誌広告に比べると、じっくりと見てもらえる媒体だとよく言われる。そのため、「続きはウェブで」や「○○○で検索」といった誘導策で、他媒体との役割分担が行われることも多い。BtoCの分野においては、一定の重みがある意見かもしれない。
ただし、BtoB分野においては逆の側面がある。
多くの企業では、まだまだ「対面営業」や「電話営業」といった対人的な営業アプローチが主力となっている。対人営業ならば、相手の反応を見ながら伝わっていないところを重点的に説明することができるし、相手も聞くことができる。短い時間で関心を引かずとも、時間をかけて商品やサービスの良さをしってもらえるチャンスがあるだろう。
現在の主力である対人営業とWebサイトを比較すると、Webサイトはインタラクティブ性がなく、顧客に関心を持ってもらえなければあっさり去られてしまうメディアだ。
実際に、リスティング広告ならば40文字程度同士で競合とクリックを取り合うこととなる。テキストのみの短いコピーで他社に勝たなければならない。
仮にサイトに誘導できたとしても、顧客はそのサイト上に自分の欲しい情報があるか、魅力的な情報があるかを瞬間的に判断している。もしそのサイトに自分の欲しい情報がなければ、検索エンジンに戻り次のサイトを探してしまう。しっかりとしたコピーがなければ、直帰率の高いサイトとなり、奥のページまで見てもらうことができない。
Webサイトは一見じっくり見てもらえると考えてしまいがちだが、それは顧客に関心を持ってもらって初めてそうなる。まずは、自社に関心をもってもらうためのショートメッセージが必須だと考えてよいだろう。