司令塔を探せ!
ひと昔前、「Where's Wally?;ウォーリーをさがせ!」というイラスト絵本が流行りました。一見同じ服装をしているように見える群集のイラストの中から、ウォーリーと呼ばれる一人のメイン・キャラクターを探し出すという趣向のものです。ターゲット探しはこれと同様のものとして考えられます。
ただし、決して闇夜の中を手探りで見つけ出すような当てのない作業ではありません。ウォーリーに赤と白の縞模様の服、眼鏡や杖などの頼りとなる特徴があるのと同じように、ターゲットにも特徴があります。それをできるだけリアルにイメージしてみましょう。イタコの術も駆使すると良いでしょう。どんなプロフィールで、どんな生活をしている人なのかを考えます。何度も行き来しているうちに、ウォーリーが炙り出されて見つけられるがごとくに、私たちが探しているターゲット像も見えてくるのです。
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さあ、皆さんも考えてみましょう。 ・どのような人が、買ってくれるのでしょうか? ・どのような人が、使ってくれるのでしょうか? ・どのような人が、買う銘柄(ブランド)を決めているのでしょうか? ・どのような人が、他人にくちコミで推奨してくれるのでしょうか? ・どのような人が、ブログや掲示板に書き込んでくれるのでしょうか? etc. |
ターゲットはビールを飲む夫か、それとも実際に購入する妻か
ところで、コミュニケーション戦略で設定するターゲットのことを「コミュニケーション・ターゲット」と呼びますが、これはマーケティング戦略上のターゲットと必ずしも一致するというわけではありません。ここがコミュニケーション戦略を設計する上で、一番ダイナミズムを感じることのできるポイントであり、面白いところでもあります。例えば、ビールを飲んでいるのは世帯主の夫であるが、実際にスーパーで買っているのは妻である主婦という場合を想定してみましょう。あなただったらどちらにコミュニケーションする戦略をとりますか? どちらが効果的なのでしょうか?
一概に正解は一言では言えませんが、この場合は購買銘柄の決定者が誰なのか、ということが非常に重要な判断基準になりそうです。主婦が銘柄を決定しているならば、主婦の多くが仮にそのビールを一滴たりとも飲んでいなくとも、コミュニケーション・ターゲットとして適切だということが言えます。すなわち、スーパーや酒のディスカウントストアなどの購入時点により近い接点でのコミュニケーションが重要視されるのです。ビールのユーザーではない主婦が、コミュニケーションでは重要なターゲットと考えられる一例です。逆の場合も、同じように考えれば、だいたい想像がつくでしょう。
また、コミュニケーション目的の設定も、コミュニケーション・ターゲットに大きな影響を与えます。「価格の情報を伝達し、購入したいブランドとしてポジションを獲得する」ということがコミュニケーション目的ならば、上述のように主婦が最も適切なコミュニケーション・ターゲットになるのかもしれません。
しかし、コミュニケーション目的が「そのブランドを飲んだ消費者の感想や印象をインターネット上に増幅させる」ということならば、ビールの実際のユーザーでありかつインターネットで自発的に発言することを厭わない人というコミュニケーション・ターゲットの設定の方が的を射ていると言えるでしょう。
ここで、強調したいのは、一人の司令塔を厳密にイメージするほど、攻略のツボが見えてくる、ということです。とりわけコミュニケーションの領域では、ターゲット像がリアルであればあるほど、説得のシナリオというのが明快に見えてくるものなのです。


