インパクトのあるキャラクターを生み出し、スタイル化する
どのようなデザインで勝負すべきか要点をまとめた洗い出した後、次は実際にデザインを起こす工程に入ります。実際に、私がキャラクターデザインしたものを例にご説明します。
私の場合、最終的な1つのキャラクターを決定するまで、たくさん描いて、描いて、描きまくります。キャラクター作成は、100人の中からアイドルを発掘する作業に似ていると思います。「あるCMに起用したい」というイメージでモデルを探すのには、たくさんいればいるほど見つけやすいのではないでしょうか。
キャラクターも同様で、まずは画面いっぱいに描いた後、一番光りそうなものに焦点を当てて、さらに詰めていきます。キャラクターは突き詰める作業ですので、非常に根気が必要です。
前職ではデザインだけでなく、キャラクターの会話や行動パターンのAIをスクリプトで書いた経験もあります。あるオカマのキャラクターを作成するのに、新宿2丁目のお店まで行って取材したこともありました。
キャラクター作成は、ユーザーにどれだけ愛情を持ってプレイしてもらえるかが決まるので、徹底的に追及することが大事だと思います。

上図の“new”は、「もっとサンシャイン牧場」という新規タイトルで、今回私がデザインしたメインキャラクターの「ようこちゃん」と「虫」です。
ようこちゃんと虫は、既に従来のサンシャイン牧場に存在していたキャラクター(“old”)なのですが、それをベースに、今回のゲームの目的とニーズに合わせてかなりの数を描き起こしました。
今回のプロジェクトの目的は「既存のサンシャイン牧場のユーザーに新しい体験を与え、さらには新規ユーザーを開拓する」でした。そこから考えると、サンシャイン牧場のデザインの方向性は、「従来の中国テイストを取り払い、日本の女性にとって馴染みやすいキャラクターで、可愛く生まれ変わった新鮮さを出す」ことだと考えました。
最終的にそのイメージに一番フィットしたのが“new”のデザインだったのです。
ここまできたらほぼ完成ですが、fixさせる前にバナーやUI、Flashに載せた時の視認性についても確認すべきです。
日本人女性は、簡単で覚えやすく、シンプルなのにカワイイキャラクターが大好きです。また、キャラクターのデザインが簡単であればあるほど、後々UIの中で絵文字としても扱えたり、Flashを作成する際にサイズの軽減にもつながったりするので、シンプル化するメリットは非常に大きいです。後々の可能性を考えて、無駄な線がないか、もう一度確認してみてください。
デザインが決まれば、あとはスタイル化する作業に入ります。弊社では、私がデザインした素材を中国のデザイナーが扱うことも多々あります。そのため、特にこうした作業は重要なポイントです。
せっかく線一本のニュアンスにもこだわってデザインを固めたにも関わらず、スタイル化を怠ると、他人の手に渡った途端一瞬にしてデザインが破綻してしまいます。
さらに、基本デザインをスタイル化することによって、上図のように誰でもデザインを応用しやすくなります。ソーシャルゲームはイベントが多発するので、キャラクターをイベントごとに着せ替えしたり、アレンジしたりすることはよくあります。
スタイルシートがあれば、キャラクターの色やスケール感についても事前に全員で共有できるので、必ず実践してください。