根付いていない「ゆるカワイイ」をどう共有する? 北京における苦戦
このように書いていると、中国のデザイナーとも普段からスムーズにやり取りしているような印象を受けられるかもしれません。しかし、現実は決してそうではありません。いくら仲のイイ間柄であっても、文化と言葉の壁というものを何度も痛感してきました。
特に今回苦戦したのは、「ゆるカワイイ」という概念が上手く伝わりにくかったことです。開発当初は、「カワイイ」と「ゆるカワイイ」の違いを説明するためだけに出張したくらいです。
「もっとサンシャイン牧場」は、他社と差別化を図るために、「ゆるカワイイ」というコンセプトをキーワードにしていました。しかし、なかなか思うように「ゆるい」というニュアンスが伝わらず、気が付けばただの「カワイイ」になっていました。
さらに、修正を重ねるうちに皆のモチベーションを下げてしまうことになりました。通訳の方に手伝っていただいても、そもそも最初から概念として根付いていないものについて説明するのには限界があります。ホワイトボードに描いて説明したり、中国にある「ゆるカワイイ」ものを探して、「こういうニュアンスのことだよ!」という伝え方をしたりしました。
上のFlashは、そうした中で一緒に作ったゆるカワイイの最たるものです。あるガチャFlashの一部分のカットにすぎないのですが、わずか3秒ほどの間でたくさんのキャラクターが様々にゆるカワイイ動きをします。 苦労しただけに、これが出来上がった瞬間は、心底感動しました。「ゆるカワイイ」を表現するための「クスッと笑えるしぐさ」や「トボけた表情」が上手くまとまっています。
異国の人と同じ目標を持ってモノづくりをするのは難しいことですが、その分やりがいがあります。自分と似た感覚を持つ日本人同士で仕事するよりも、遥かに刺激的ですし、「カワイイ!」の見せ方の新しい発見にも出会えます。
弊社では本タイトルに限らず、北京チームと開発する機会は多いのですが、毎回学ぶことはたくさんあります。しかしやはり最終的には、お互いの認識の違いを知り、理解しようという思いやりが大切だということに気づかされます。