意味やコンセプトをまとめる、置きかえる
では、濃縮還元フレーズはどう生み出すかということだが、これは脳をフル稼働するしかない。こればかりはGoogle先生に訊いても答えは出てこない。「~できる10の方法」のような表現のテンプレートがあるわけではないので脳に負荷を与えて絞りだすしかないのだ。すまん、ショートカットはないのだよ。
いつもそうした発想が求められるコピーライターはどうするか。近道はないが、考えるコツとして挙げられるのが「早い話が…」「要するに…」で考えるやり方だ。
ウォシュレットの広告コピー「おしりだって洗ってほしい。」など名作コピーやヒットCMで知られるコピーライター 仲畑貴志さんは、まず原稿用紙の1行目に「早い話が」と書く。それに続けて「早い話がなんとかかんとか」とコピーを書き、最後に「早い話が」と書かれた部分をハサミで切り捨てる。そして残った部分を吟味していくという。
思考のディレクションである。「早い話が」の代わりに「要するに」でもよい。濃縮還元する場合は、さらに書いたコピーを10字以内にするなど文字数を短くする工程も必要になってくる。
そうは言っても簡単でもないので、いくつかヒントを紹介する。
まとめて短縮する
機能などに共通の要素があればひとつにまとめる。たとえば、地震通知メールや避難マニュアルなどの地震に備えた機能がいくつか入ったアプリがあるとしよう。短くまとめると次のようなキャッチフレーズが考えられる。
地震対策、入っています。
冒頭に紹介した女性誌のヘッドライン「春のおしゃれホワイトプラン」も同じ考え方だ。まとめるという意味では、コトバを短縮して2つ以上のことをひとつにする表現もある。ふわりとしていて、とろける食感を「ふわとろ」、安くてカワイイ服が「安カワ」などのように分野を問わずよく使われる方法で、濃縮還元フレーズの王道とも言える。
価値やコンセプトで言いかえる
商品の価値を短く言う表現だ。以前に居酒屋で見かけたポスターに書かれてあった「美白鍋」。コラーゲンがたっぷり入った鍋らしい。そして、美白鍋中心の宴会メニューをこう訴求していた。
Wコラーゲンたっぷり、美肌宴会はいかが?
こうしたフレーズは女性誌が最も得意とするところだ。ちなみに、Tシャツからネクタイまで着回わせるジャケットのことを男性ファッション誌では「全方位ジャケット」と表現。これは価値というよりコンセプトで言い変えたフレーズだ。
流行語にもなった「草食系男子」もコンセプト型だ。他にも「音楽は心のビタミン」のように比喩(直喩)を用いた表現が多い。性質、形状などの特徴を別の既存のコトバに置き換える方法である。
本文でも「濃縮還元フレーズ」と言っているが、これはメッセージのエッセンスを凝縮するという性質を言い変えた表現である。はじめは煮詰めて取り出した「結晶化フレーズ」にしようかと思ったが、結晶化ではピンとこない場合もあると思ったので、より分かりやすい「濃縮還元」にしたのである。
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