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スマホ広告配信ツール最新動向(AD)

急成長が確実なスマホ広告向けにいち早く参入
スマホ特化のRTB対応DSP「Bypass」を開発したngiの勝算

 アンテナの高い広告担当者の間で、昨年ごろから話題になり始めたDSP。PC向けの広告配信で利用する企業は確かに増えてきているが、この4月にはスマートフォン向け広告配信に特化したDSP「Bypass」が登場した。いち早くスマホ特化のDSPをリリースした狙いはどこにあるのか。Bypassを開発したngi groupの事業責任者に話を聞いた。

スマホ特化・RTB対応のDSPが登場

 いつ、どの媒体のどの枠で、どれくらいの量を露出するのか。ディスプレイ広告は掲載する期間・場所の制約が多く、リスティング広告と比べて小回りが利きづらかった。そんな状況もDSP(Demand Side Platform)の登場をきっかけに、昨年ごろから変化の兆しが現れ始めている。

 DSPとは文字どおり、広告主(買い手)のためのプラットフォーム。媒体の壁を越えたユーザー属性に基づく広告配信、リアルタイムの広告インプレッション(imp)の買い付け、広告効果の自動最適化といった機能を備え、従来よりもずっと柔軟にディスプレイ広告を配信できるようにする仕組みだ。ngi group株式会社が4月2日から提供開始した「Bypass」もDSPの1つ。

BypassはスマートフォンのRTBに対応したDemand Side Platform
BypassはスマートフォンのRTBに対応したDemand Side Platform

 スマートフォンに特化し、リアルタイムの広告入札(リアルタイムビッディング。以下、RTB)などに対応している。

RTB(Real Time Bidding)はインプレッション毎の質や条件をリアルタイムに判別し、
判別した結果から広告主がリアルタイムでインプレッションを入札できる仕組み
RTB(Real Time Bidding)はインプレッション毎の質や条件をリアルタイムに判別し、判別した結果から広告主がリアルタイムでインプレッションを入札できる仕組み

 例えばBypassを導入することで、次のような細やかな広告配信が可能になるという。

  • 広告を露出したい時間帯があった場合、1時間単位で配信時間を指定してユーザーに広告を配信することができる。
  • 広告枠の空き枠状況を確認せずに、広告を露出したい任意のタイミングで広告を配信する事ができる。
  • 広告配信地域のターゲティング機能を使う事で神奈川に住むスマホユーザーには神奈川向けに最適化した、千葉に住むスマホユーザーには千葉向けに最適化した広告とランディングページの組み合わせを配信し、広告効果の最適化を図る。

DSPに注目が集まり始めている中、ngiの勝算は?

ngi group株式会社
DSP事業部 事業部長
岡部健二氏

 DSPに注目が集まり始めているとはいえ、まだ普及途上。このタイミングでスマホに特化したDSPをリリースする勝算について、ngiはどのように考えているのだろうか。同社DSP事業部の岡部健二事業部長は、Bypassリリース後の手応えについて、次のように語っている。

 「PC向けの広告市場では、国内でも昨年からDSPが急速に広まってきています。一方、スマホの広告市場では、RTB機能を備えたDSPが登場し始めたのが今年の2月~3月ごろ。まだ3カ月ほどしか経っておらず、まだまだ立ち上がったばかりです。

 ですがちょうど今年の4月から、モバイル広告の予算をフィーチャーフォンからスマホにシフトする広告主が増えてきています。中にはPCでDSPを使うのに慣れてきた広告主もいらっしゃいますから、『スマホで広告を出す時もDSPを使いたい』というところも出てきているようです。

 またスマホ広告市場は元々、規模の大きなメディアがほとんどありませんでした。大手メディアの純広告枠が売れ始めるよりも先に、多数のメディアを束ねたアドネットワークに人気が集まりました。メディアのブランドを気にせず、広告を打つ環境は整っていたわけです。

 ただ、アドネットワークではかゆいところまで手が届きません。広告主ごとに違ったマーケティング課題を抱えていますから、それぞれの課題を解決できるDSPの機能を紹介すると、非常に良い反応が得られています。スマホ向けDSP市場が盛り上がってくるのはまだこれからではありますが、初速の感触は悪くありません」(岡部氏。以下、同)

ほかのDSPとの違いを生み出すBypassの3つの特徴

 DSPは注目を集め始めているだけに、自然と新規参入するプレイヤーも増えてきている。そんな中でBypassはどのような点で差別化を図ろうとしているのだろうか。岡部氏によると、BypassがほかのDSPよりも勝っている特徴は次の3つ。

  • グローバルなインベントリー(広告枠在庫)の保有
  • 広告効果自動最適化
  • 多彩なターゲティング、豊富なレポート

 それぞれの特徴について詳しく触れていこう。

グローバルインベントリーの保有

 ngiがスマホのメディア向けに提供し、最近登録メディア数が1,000を超えたSSP(Supply Side Platform)「AdStir」とBypassはRTB接続済み。

 DACグループの株式会社プラットフォーム・ワンが提供するSSP「YIELD ONE」との接続も進んでいて、国内最大級の広告在庫を保有することになる見通しだ。

 また最近は、日本のスマホアプリ開発企業による海外展開が目覚ましいこともあって、海外のSSPやアドエクスチェンジとの提携も発表間近に迫っている。

 「全世界の広告枠在庫をBypass経由で購入できるようにしたいです。国内だけではなくて海外の広告主にも目を向け、海外の広告主が日本の広告を買う時にも使えて、海外to海外も可能な全世界で通用するDSPを作りたい」(岡部氏)と意欲的だ。

広告効果自動最適化

 DSPの中には広告配信結果を分析し、広告効果が最大になるよう、自動的に最適化してくれるものもある。Bypassにも広告効果の自動最適化機能はあるが、

 「他社は何万~何十万impも配信した後、媒体別に効果を見て、効果の悪い媒体を停止する仕組みのようです。対してBypassは、1 impごとに多変量解析で効果を分析し、最適化します」と機能の違いについて岡部氏は解説してくれた。

 つまりBypassは、広告配信された先の媒体情報だけでなく、配信地域・曜日・時間、デバイスのOS・キャリア、広告枠といった複数の条件を踏まえて1 impごとに効果を分析している。

 「わずか10件程度しかコンバージョン(CV)が取れなかった媒体でも、コンバージョン率(CVR)が高くなる配信条件があるかもしれません。でも、全体で効果を見たら『効果が悪い』と判断して切り捨てることになってしまいます。Bypassなら1 impごとに判断するので、効果が悪い媒体の中にも高い効果が見込める条件があれば配信します。そこが大きな違いです」

多彩なターゲティング、豊富なレポート

 Bypassでは先に挙げたような配信条件をシステムで把握しているため、広告配信先のターゲティングも細やかに指定できる。「自社調べですが、RTB機能を備えたスマホ向けDSPの中ではターゲティングの種類が一番豊富」と岡部氏は言う。

 さらに特筆すべきは、CPC(Cost per Click。クリック単価)課金にも対応していること。多くのDSPがCPM(Cost per mille。1000 imp当たりの配信単価)課金のみに対応しているが、「ngiがリスクを負い、クリック率を担保してCPCでご利用いただけるようにしています」(岡部氏)。

 レポートも充実している。imp、クリック、CV、CV、CPAといった項目を、クリエイティブ別、地域別、曜日・時間帯別、OS別に計測可能。さらに集計結果を円グラフや棒グラフとして出力し、パッと見て分かりやすくなるように意識して作り込まれている。

レポート画面のサンプル
レポート画面のサンプル

SSPを両輪にすることで、スマホ広告市場自体の拡大を図る

 ngi groupは、広告主に向けたDSPのBypassと、メディアに使ってもらうシステムであるSSPのAdStirを両輪にして成長させていこうと考えている。

 しかし、片や広告配信効果を最適化することを目的にし、片やメディアの収益最大化を目指している。「DSPとSSPをどちらも持つことで利益が相反するのではないか?」という指摘を関係者から受けることもあると岡部氏は語るが、次のような見解をもっている。

 「ngiではDSPとSSPをそれぞれ別事業部にしています。1:1の関係で取引をしているのではなく、お互いが複数のパートナーを開拓してN:Nで取引を拡大していく戦略を採っています。

 確かに1:1の関係なら利益が相反することもあるかもしれませんが、N:Nならスマホ広告市場自体を拡大する推進力になるはず。優良なメディアの収益性は高くなり、効果が見込みづらいメディアには割安な料金で広告が出せるよう、エコシステムが自然と整っていくのではないでしょうか」

広告枠在庫の拡大、第三者配信への対応などを準備中

 Bypassの今後の展開については、まずはRTB接続先のパートナーを増やし、広告枠在庫を拡大することに注力する。

 続いて、広告代理店による広告クリエイティブの第三者配信に対応するために各社のアドサーバーとの連携を強化し、運用時の使い勝手が良くなるように管理画面のユーザビリティも見直していく計画。プラットフォームに望まれることを、各事業者と連携し、一つずつ進めていく姿勢でいる。

 「機能拡張も予定しています。例えば、ターゲティング機能。さらに多彩なユーザー属性でターゲティングできるように、ユーザーの行動履歴を詳しく追えるようにしていくつもりです。ngiとして、BypassとAdStirは事業の柱にしていきます。スマホ向けのDSPとSSPのベンダーとして、トップに立ちたいですね。

 現状、競合企業は多くなく、市場自体が立ち上がったばかりです。ほかの企業とも協力して一緒に市場を盛り上げていくことが先決ですが、その中でもトップに立てるよう努めていきます」

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この記事の著者

中嶋 嘉祐(ナカジマ ヨシヒロ)

ベンチャー2社で事業責任者として上場に向けて貢献するも、ライブドアショック・リーマンショックで未遂に終わる。現在はフリーの事業立ち上げ屋。副業はライター。現在は、MONOistキャリアフォーラム、MONOist転職の編集業務などを手掛けている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2012/05/18 13:02 https://markezine.jp/article/detail/15623