「このままだと会社つぶれますよ」
野田:うん。そのときの社内の雰囲気としては、「スマホはまだいいでしょ」という雰囲気がまだ強くて、既存事業を拡大させていくような流れだったんだけど、モバイルネットワークを強みとするアドウェイズだからこそ「やらなければいけない」なと。
山田:フィーチャーフォンの限界を感じていた、というところもありましたね。
当時の業績や市場の動きを見ている限りでは、特にアフィリエイトに関してはフィーチャーフォン向けの広告事業の規模が縮小して行くような兆候もなく、スマートフォンを使っている人もそんなに多くなかったので、経営層としては”スマートフォンは時期尚早”と思っているだろうと考え、あえて「このままだと5年くらいで会社つぶれますよ」ということを猛プレゼンしましたね。

プレゼンの段階では経営陣に強い印象を持ってもらうために、会社がつぶれるというメッセージを強めたんですが、実際のところは焦っていたと言うよりも日本にはまだないサービスを展開したいと言う気持ちのほうが強かったですね。
野田:うん。GDCで感じた北米市場の独走感と、なんとも言えない高揚感を思い出すね。スマートフォン時代が来ると国境の壁も取り払われるので、グローバルレベルでの戦いになったときにアメリカの企業にやられてしまうという焦りもあったかな。
危機感よりも冒険心

野田:当時mixiがオープン化して盛り上がっていく一方で、「怪盗ロワイヤル」が爆発的な人気を得てmobageも2010年にオープン化すると言われていた。今と比べるとそこまでソーシャルゲーム市場が盛り上がっていなかった頃だったよね。
そんなときに、GDCでキーノートに登壇していたのがコンソールゲームやオンラインゲームの会社ではなく、iOS向けのソーシャルゲームを展開していたngmocoの社長だった。そこでのメッセージは今後iOSの市場は“フリーミアム”が主流になるというもので、ngmocoもすでに「We Rule」や「GodFinger」というタイトルでアメリカのAppStoreで上位にランクインしていた。
日本においてもソーシャルゲームが注目を集め始めていたものの、スマートフォンに注目している人はそこまで多くなく、北米市場ではすでにStorm8、TeamLava、ngmoco、Pocket Gemsなどが提供するスマートフォン向けソーシャルゲームに注目が集まっている状況を肌で感じてもう鳥肌が立ったね。

新規事業開発室 副室長 山田翔氏
山田:実は当時注力していたリワードプラスも同じような形で立ち上げたんですよね。mixiがオープン化されると報道されたタイミングで、すでにオープン化されていたFacebookを調査し出したんですけど、当時ものすごく流行っていたZyngaが提供するFarmVilleなどのゲームの中にリワード広告が組み込まれていたんですよ。
mixiがオープン化される流れのもととなっているのはFacebookだと思っていたので、リワード広告においても同様に来ると確信してリワードプラスをmixi上で展開し始めたわけです。そういった経験があったので、スマートフォン向けのソーシャルゲームに関しても同じことが起こると確信し、AppDriverの立ち上げに踏み切りました。
野田:確かにリワードプラスを立ち上げたときも、アメリカで同業のOfferpalやSuper Rewardsを調べたね。また当時は、モバイル向けアフィリエイト広告サービス「Smart-C」の事業責任者をしていて、2010年はスマホが本当に普及するのかという懐疑的な雰囲気の中、正直なところどちらに転ぶか確信はなかったものの、「新しい市場ができる=そこで一番の規模・ポジショニングを取ることが必須」ということは確信してて、結局のところ「危機感よりも冒険心」の方が強かったな。