「問合せ窓口」は誰のものか?
最も、問合せ窓口数が多かった企業では、「ご相談・ご依頼」「価格問合せ」「テスト機貸し出し」「カタログ請求」「資料ダウンロード」の5つが窓口となっていた。
さらに、価格問合せフォームにいけば、価格に関する設問に変わる。テスト機貸し出しフォームにいけば、どの機種を希望しているか、現在の開発環境でテストできるかを確かめる設問に変わる。実によく設計されている問合せフォームだった。
顧客の立場になって考えれば、上記の設計は非常に素晴らしい。第一に、顧客が問合せ可能なラインナップが一目瞭然となる。
5つの問合せフォームを持つこの企業が、もし「総合問合せ」1つで片付けてしまっていれば、顧客は「テスト機を貸してくれる」ということを瞬時に理解できなかっただろう。テスト機貸し出しの窓口があるから、この企業が大企業だとしても、問合せに対してテスト機を手配してくれるということが理解できるのだ。
価格でも同様だ。価格問合せフォームがあることで、価格の見積もりをすぐに獲得できることが分かる。問合せに対する企業姿勢が分かるのだ。
第二に、設問が顧客ごとに最適化されるため顧客が回答しやすくなる。もし総合問合せの中に「予算」を記入する項目があったとしても、顧客側から見れば記入するメリットはない。むしろ予算に大きな金額を書けば、へビーな営業をかけられるのではないかと疑心暗鬼になるだけだ。
だが、「価格問合せフォーム」の中に「予算」という項目がある場合、文脈が少し変わってくる。予算に合わせた提案が受けられるのではないか? 必要以上のオーバースペックな提案を避けられるのではないか? と、顧客側にも予算を記入するメリットがでてくる。
他にも総合問合せの中に「関心のある製品」などを記入する項目があったとしても、いまから検討しようと考えている顧客にとって、知らない商品名が羅列されているとすればわずらわしい設問にしかならない。
しかし、「テスト機貸し出しフォーム」の中に「関心のある製品」とあれば、その製品を手配するのだろうとか、類似した他のシリーズも試せるだろうとか顧客には記入する必然性が生まれる。
同じ設問でも価値が変わってくる。問合せフォームとは、そもそも顧客がコンタクトを取るためにある。徹底的に、顧客側からみて問合せしやすい/したい仕組みにする必要があるのだ。
総合問合せの功罪
問合せ後のフォローがうまくいかないI社の課題の半分は、問合せ窓口のラインナップを増やし、設問を最適化することで対策を打つことができる。もう半分はここからだ。
I社の問合せ後のフォローがうまくいかないというお話しを詳しく伺うと、マーケティング部門の立場からは、Web問合せに対してなかなか営業部門が積極的にアプローチしてくれないという見解だった。しかし、上記のような問合せの状況では、正直営業部門が積極的にアプローチしたくとも、やりようがない部分がある。生まれるべくして生まれた状況であるといえよう。
なぜなら、総合問合せという大きな窓口を構えれば、設問は顧客のニーズや検討段階に最適化することができない。かといって設問数を多くしようとすれば、問合せ数そのものが減るのが怖くてやりずらい。無理に設問数を増やしても、解答率が悪くなる。結局、問合せという大きい項目に自由に記述してもらうスタイルになってしまう。
すると、総合問合せには、
- カタログください。なるはやで
- 価格を教えてください。一番安いものを
- 他社との性能比較表をください
といった、いろいろなレベル感の問合せがごちゃまぜになって来てしまう。
これだけでは営業部門からすれば、積極的にアプローチしてよいものか判断がつかない。競合や代理店などの関係性も考えれば、これだけの情報では価格や使用といった貴重な営業情報を出すに出せない。
結果、次第に新人にとりあえず訪問や電話をさせてみたり、担当はつけたもののより確度が高そうな電話問合せなどの後回しになったり、とWeb引合いを軽視する土壌ができてしまうのだ。悪循環の始まりである。
2012年12月5日(水) 10:00 ~ 17:00にLIVE!アクセス解析&Webサイト改善実践講座を開催します。現在あるWebサイトを改善し、成果を高めることに特化した実践的な内容ですので、ぜひご参加ください!