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次世代広告エージェンシー最新動向(AD)

広告代理店進化論「激変する環境を強みにせよ」
eマーケティングカンパニーのミッションとは

 ITやアドテクノロジーの技術革新により、マーケティングは大きな変化を遂げている。それにともない、広告代理店が提供するサービスやメディアの概念も同様に変わりつつある。変化に対応できるものが生き残るように、激変する環境を強みにするべく、果敢に新たなプロダクト戦略に取り組むオプトの執行役員八田氏に、広告代理店をとりまく状況と今後の展望を述べていただく。

矛盾を内包する広告代理店の2つのミッション

  株式会社オプト 執行役員 八田氏

 広告代理店には大きく2つの役割がある。1つ目は広告主へマーケティングサービスを提供すること。2つ目はメディア/コンテンツの育成だ。実のところ、この2つの役割は、表面上は利害が一致せず、矛盾するサービスをひとつの会社(グループを含む)で内包している。

 その理由としては、広告主が出稿する良質な場所をつくるために、メディア/コンテンツの育成が広告代理店に期待されていることがある。そして今日、この2つの役割はITの進化により、大きく変わりつつある。その理由は明白だ。広告主が広告代理店を選ぶ理由が変わり、メディア/コンテンツが人を集める要件が変わりつつあるのだ。これから、特に大きく変化しつつある概念を紹介していこう。

広告枠売買の代理人から、広告運用管理者へ

 かつての広告代理店は、「広告枠をメディアから買い、広告主に販売する」という、広告主とメディアの双方の代理としてメディア枠を売買することが主たる仕事であった。これが広告代理店と呼ばれるゆえんである。

 今日では、この状況は大きく変わった。ただの広告枠売買の代理業務ではなく、広告主とメディア双方の代理で広告運用管理を行うようになってきている。検索連動型広告やアドネットワーク、DSPなどディスプレイ広告の領域においても同様に、広告運用管理者としての役割をかなりの割合で求められる。

 例えば、リスティング広告の運用は、原則的にはキーワードや1日あたりの予算、入札する金額など、本来は広告主の判断を仰いで決定されるべきである。しかしながら現実は、細分化されたプロセスにより手間が増えたこともあり、月あたりの予算と目標となるKPIに対する効果といった大きな視点でのみ判断される。

 株取引をイメージしてもらうといいだろう。今までの広告枠の売買は個別株の取引、一方で広告の運用管理はちょうど投資信託の運用のようなものだ。

 かつては、どの広告代理店から広告枠を買っても基本的には同じ料金、同じ効果であった。それが広告運用のプロセスが細分化された今日では、広告代理店間の巧拙の差が明確になり、成果に大きな差が生まれるようになった。

PDCAサイクルは古い?D(実行)からはじめよ

 事前に綿密な仮説を立て、それを実行して検証、再度プランニングする。これは一般的なPDCAサイクルの概念である。先に仮説を立てることで、無駄なコストを削減し、仮説を検証していく一連の流れは、多くのプロジェクトを進めるうえで適用されている。

 しかしながら、PDCAサイクルを忠実に実行するよりも、場合によっては仮説を立てるのではなく、まず先に実行してから検証した方が効果的なケースが出てきている。

 例をあげよう。検索連動型広告などは1クリックあたりのコストが安く、かつ大量のキーワードを出稿する。数百万、数千万個のキーワードに渡ることは特に珍しくない。PDCAサイクルに従い、無駄打ちのコストを恐れ、個別のキーワードごとの仮説を立てることは、莫大な時間的コストをかけることになる。つまり、人間の力ではもはや物理的に無理な量なのだ。

 あらゆるプランを実行検証する従来のマーケターの仕事も、マーケティングの変化とともに変わりつつある。世の中から広告そのもののプランニングがなくなる事はないが、省いたり、自動化できる分野はどんどん出てきている。広告を出稿する目的は売上の拡大であり、本来はその一点にのみ集中すべき。クリエイティブやターゲット、掲載面のデザインなどプランニングが必要な分野も依然と存在する一方で、自動化できるものは積極的にしていくべきなのだ。

マーケティングの目的は売上拡大、無駄なプロセスは排除せよ

 企業がマーケティングを行う目的を売上の拡大としよう。極端に言えば、その際に必要なものは損益計算書(P/L)だけである。途中のプロセスにおけるレポートや提案書は、すべてコストだ。誰がどのように負担すべきかは別として、コストは可能な限り削減できた方が良い。

 つまり、意思決定のプロセスを簡素化するほどコストを削減でき、プロフィットを大きくすることで、マーケティングの成功確率は高くなる。顧客のマーケティング成功のために広告代理店が存在するならば、意思決定の時間とプロセスを短くすべきだ。

アマゾンや楽天は、もはやメディアである

 インターネットにはマスメディアと比べて、コンテンツがないとしばしば言われるが、これは本当だろうか。

 枠から人へと広告の概念が変化し、コンテンツの「蓄積」と「量」がより重要になってきている今日においては、私はインターネットのほうがコンテンツが豊かだと考える。

 具体的にいえば、RTBやDSPなどアドテクノロジーの技術革新により、ターゲティングや検索精度が向上したことで、いまやメディア側の営業による手動管理よりも、運用管理を自動化したほうが高いインプレッション価格で広告価値を実現できるようになった。このような状況下では、たとえ一つ一つのコンテンツが貧弱であったとしても、ロングテールのコンテンツの蓄積が重要な要素となる。オンリーワンなコンテンツと比べて、一方的に格下と見ることはもはやできないだろう。今までは視聴率、発行部数などで比較することができたが、インターネットの世界では、それ以外の要素が増えているのだ。

 例えばアマゾンや楽天、Yahoo!ショッピングはメディア/コンテンツと言えるだろうか。編集の要素は少なく、誤解を恐れずに言えば商品を並べているだけの要素が強い。しかしながら、ユーザーはこれらの場に集まり、長い時間滞在し、売買を活発に行っている。ソーシャルメディアにも同じことが言えるだろう。一つ一つの構成要素がもつ影響力は弱いかもしれないが、今やユーザーは可処分時間の大部分をこれらの場に費やしているのだ。メディア/コンテンツの定義は難しいが、マーケティングにおいて、これらの総合ECサイトやソーシャルメディアは、もはや無視できない存在になっている。

 今日でも「質」を生み出す編集力は必要なスキルであるものの、「量」や「蓄積」といった要素がより重要性を増しつつある。

「ロングテールの蓄積」イメージ図

one to oneマーケティング実現への3つのソリューション

 これまで述べてきたように広告代理店を取り巻く外部環境の変化は著しく、また一方で企業の代理店離れと言われて久しい。特にインターネット広告の世界では、代理店は必ずしも必要不可欠な存在ではない。実際にメディアと広告主による直接取引が増える中、選ばれ続ける広告代理店であるためには時代の先を見据えて進化していかなければならない。広告主の商品の魅力を、適切なタイミングで、適切な人に届けるためには、従来からあるクリエイティブやターゲット分析はもちろんのこと、テクノロジーによるソリューション強化が不可欠だ。

 アドテクノロジーの進化により、マーケティングにおける商品訴求がまさにone to oneに近づきつつある。適切なタイミングで、適切な商品を、適切な人に、適切な表現で、届けることは、非常に広範囲での実現が可能になっている。課題は依然としてあるものの、広告テクノロジー側のシステムと顧客の状況に合わせたシステムをアジャストする技術を開発していくことで、実現可能な範囲はより広がっていく。とくに期待できるものとしては下記の3点だ。

  1. 顧客側商品状況のリアルタイム更新
  2. 顧客サイトに埋めるタグの整理
  3. 統合マーケティングプラットフォーム

ポイント1:顧客側商品状況のリアルタイム更新

 オプトと弊社グループのTAGGYで共同開発したMCP(Mulch Channel Publisher)は、商品名・在庫・価格・セールなど商品の個別ステータスを把握した広告クリエイティブとランディングページの出し分けを実現できる。検索連動型広告、レコメンドエンジン広告、オーディエンスターゲティング広告などに利用用途は広がり、ROIを大幅に改善することが可能だ。

ポイント2:顧客サイトに埋めるタグの整理

 顧客サイトに埋めるべきトラッキングタグは、効果測定から流入経路別配信制御、第三者配信、DSPなどの目的に応じて、種類も数も飛躍的に増加した。オプトでは効果測定「ADPLAN」で培ったノウハウをもとに、タグマネジメントサービスを提供している。「ADPLANワンタグ」は企業サイトにおけるタグの設定や運用を一元管理するためのシステムで、商品IDなどを動的に引き継ぐタグにも対応。サイトソースを変更せずに、管理画面上から各ページや商材ごとに、タグの設定・編集・削除を行うことができる。

 「ADPLANワンタグ」
 「タグマネジメント」イメージ図

ポイント3:統合マーケティングプラットフォーム

 今日では様々な広告手法が現れてきたことにより、利用する広告ごとにレポートの単位がバラバラになるのが一般的である。それを顧客側の視点に立ち、意思決定を迅速にするために、オンラインはもちろん、オフラインも含めたDBを統合し、顧客のマーケティングプラットフォームを構築することが必要だ。オプトでは「ADPLAN」をベースに様々なツールベンダーとの連携を可能にし、データ計測から意思決定までをシームレスにつなげている。

eマーケティングカンパニーとして進む第3の道とは

 ここ数年、インターネットマーケティングの環境変化は著しい。数年前では信じられないようなサービスが次々と生まれてきた。タイムマシンで2000年代前半から2012年へやって来た人たちは、その進化に驚くだろう。これは広告主も含めて、業界内のあらゆるプレイヤーがマーケティング効果の向上に正面から向き合った結果と言える。私たち広告代理店も、目に見えるところから見えないところまで、少なくないシステム投資、そしてそれを使いこなす社員の育成を手掛けてきた。

 しかし、個々のサービスが進化し、すばらしい費用対効果を生み出す広告商品を提供すればするほど、顧客からは全体を統合した戦略の構築と確実な戦術の実行を求められる。プラットフォームと名のつくサービスを導入を進め、さらなる自動化を進めても同じことが言える。

 今後も、テクノロジーが進化するほど、顧客のニーズはますます広がっていくだろう。今まで述べてきたことと矛盾するようだが、広告商品の運用力を高め、高いROIを実現すればするほど、同時にその個別の商品をトータルして統合管理する力が求められる。個別最適と全体最適の両立、そのニーズに応えるサービスを提供し続けていくことが、私たち広告代理店のミッションだ。

「オプトの目指すポジショニング」

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この記事の著者

株式会社オプト(カブシキガイシャ オプト)

1994年設立。インターネットのマーケティング戦略を総合的にカバーするeマーケティングカンパニー。総合的なソリューションと各プロダクトごとの高度なノウハウから最適化の為の提案―管理までワンストップで提供するプロフェッショナル集団。
【事業内容】
「広告・ソリューション事業」「データベース事業」「ソーシャル&コンシューマ事業」「海外事業」

・株式会社オプト
・「ADPLAN」

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

八田 浩(オプト・執行役員)(ハッタ ヒロシ(オプト・シッコウヤクイン))

オプト・執行役員 広告・ソリューション事業管掌 兼データベース事業 アドテクノロジー本部長。
2001年明治大学経営学部卒業。証券会社勤務を経て、2004年株式会社オプト入社。2006年名古屋営業所長。2008年から株式会社電通との資本業務提携全般を担当し、同社へ出向。2010年オプトに帰任し、PCにおける広告商品の企画、運用を担当するメディア本部で本部長に就任する。2011年7月執行役員に就任。現在は広告ソリューション事業及...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2012/09/12 11:00 https://markezine.jp/article/detail/16306