矛盾を内包する広告代理店の2つのミッション
広告代理店には大きく2つの役割がある。1つ目は広告主へマーケティングサービスを提供すること。2つ目はメディア/コンテンツの育成だ。実のところ、この2つの役割は、表面上は利害が一致せず、矛盾するサービスをひとつの会社(グループを含む)で内包している。
その理由としては、広告主が出稿する良質な場所をつくるために、メディア/コンテンツの育成が広告代理店に期待されていることがある。そして今日、この2つの役割はITの進化により、大きく変わりつつある。その理由は明白だ。広告主が広告代理店を選ぶ理由が変わり、メディア/コンテンツが人を集める要件が変わりつつあるのだ。これから、特に大きく変化しつつある概念を紹介していこう。
広告枠売買の代理人から、広告運用管理者へ
かつての広告代理店は、「広告枠をメディアから買い、広告主に販売する」という、広告主とメディアの双方の代理としてメディア枠を売買することが主たる仕事であった。これが広告代理店と呼ばれるゆえんである。
今日では、この状況は大きく変わった。ただの広告枠売買の代理業務ではなく、広告主とメディア双方の代理で広告運用管理を行うようになってきている。検索連動型広告やアドネットワーク、DSPなどディスプレイ広告の領域においても同様に、広告運用管理者としての役割をかなりの割合で求められる。
例えば、リスティング広告の運用は、原則的にはキーワードや1日あたりの予算、入札する金額など、本来は広告主の判断を仰いで決定されるべきである。しかしながら現実は、細分化されたプロセスにより手間が増えたこともあり、月あたりの予算と目標となるKPIに対する効果といった大きな視点でのみ判断される。
株取引をイメージしてもらうといいだろう。今までの広告枠の売買は個別株の取引、一方で広告の運用管理はちょうど投資信託の運用のようなものだ。
かつては、どの広告代理店から広告枠を買っても基本的には同じ料金、同じ効果であった。それが広告運用のプロセスが細分化された今日では、広告代理店間の巧拙の差が明確になり、成果に大きな差が生まれるようになった。