浅利慶太さんの話の中でとても印象に残る言葉がありましたので、クイズ仕立てでご紹介しましょう。
浅利さんは、「松下は便利を、ニッセイが安心を売っているように、我々が売っているのは、○○です。」と仰いました。さて、○○に入る言葉を考えてみてください。
彼ら劇団四季が売っているものは、確かに芝居ですが、単にそこに留まらない何かを与えていると考えてみてください。そう考えると、残念ながら、答えは脚本でも、演出でもなさそうです。ヒントとして、「劇場に来て、人生ってすごいものなんだな、生きていて良かったなと、お客様が感じてくださるものを提供するのが我々の仕事」という話を加えて説明されていたことを付け加えましょう。
いかがでしょうか? 答えは、“生きがい”でした。お客さんが、心で感じ取ってもらえるものとして、芝居という場を通じてお客さんが人生について考えさせる機会を提供し、人間としての“生きがい”を感じさせることを売っているというところに、私は劇団四季というブランドの持つストーリーを感じました。それは、単に生きがいと言う言葉以上の、奥行きを感じさせるブランドとしての信念や、人を突き動かすだけの人間模様のような深みです。
そして、そのブランドとしてのストーリーに、劇団四季の劇団員も、それを観に行くオーディエンスも、さらにはスポンサーとなる企業も魅せられ、それがビジネスの原動力となっていることは、もはや説明の必要がないでしょう。

ブランドの夢の設計書
ここで、注目したいのは、ブランド、すなわち“らしさ”とは、人のアタマの中に存在するものだということです。だからこそ、子供の頃、「こんな人になりたい」と夢を抱いたのと全く同じように、企業が意図し、設計し、そして少しでも近づけるように努力し築き上げるプロセスが重要です。そして、「人のアタマの中にどのような“らしさ”を芽生えさせ、根付かせるのか」を考える設計書のことを“ブランド・ビジョン”と言います。そうです、まさにブランド・ビジョンは、そのブランドに対して企業が思い描く夢に他なりません。
ブランド・ビジョンは、決してその企業の社員だけのものではありませえん。ましてや、経営陣だけのものでもありません。消費者や取引先の企業、さらには株主、地域・社会など、あらゆるステークホルダーに伝わり、感じてもらってはじめて、アタマの中に少しずつ像を結んでいくものなのです。そして、その“らしさ”こそが、ステークホルダーの判断や行動を左右し、あなたのビジネスを拡げていくのです。


