地デジと一緒に普及したもの
MZ:地上デジタル放送(地デジ)への移行というのも大きな変化ですよね。
尾関:地デジがスタートしたのは2003年の12月。移行が終了したのは去年(2012年)の3月で、8年4か月かかりました。比較的混乱もなくうまく移行できたのはよかったのですが、そのときに一緒に普及したものが2つあるんです。

ひとつは、「三波共用テレビ」の普及です。つまり、地デジだけでなく、BSもCSも見られるテレビをメーカーさんがお売りになったので、地デジが普及するということはBS/CSも一緒に普及するということだった。また、メーカーさんはテレビを売るときに一緒にハードディスクレコーダーもセットで売りたい、あるいは内蔵型のテレビを売りたいと考えた。つまり、タイムシフト視聴環境も一緒に普及したということなんです。
MZ:地デジ化がもたらした意外な副産物ですね。
尾関:地デジ移行期の後半、2007~2009年くらいから同時に普及しはじめたのがスマートフォンで、これによってソーシャルメディアも伸びていった。ブロードバンドは、2001年に「Yahoo! BB」がはじまり、NTTが光ファイバーを出して広がっていきましたが、テレビにネット回線を接続して動画を見ている人はまだそんなにはいません。結線率はまだ10~20%くらいだと思います。
MZ:この数年でテレビをめぐる環境が変わったと言われてはいましたが、このようにいろんな要素が段階を経て変化し、思ってもいなかった効果があったというのは面白いですね。
「リアルタイム視聴以外はすべて敵だ」という時代は終わった
MZ:こうした環境の変化を踏まえて、ビデオリサーチでは、従来のテレビ視聴率調査のほかに、どのような調査や研究に取り組んでいるのでしょうか。

(写真提供:株式会社ビデオリサーチ)
尾関:昨年10月から、ツイッター上でのテレビ番組への反応を測る指標の整備を始めています。シンプルに言えばテレビを見てもらった量が視聴の量なのですが、見終わったあとにソーシャルで語り合っているとしたら、次の週にまた見る確率も高まるかもしれない。番組として見てもらい、ネット上で語ってもらう。両方合わせてテレビ番組に関するコミュニケーションとしてとらえるということですね。
MZ:米国の調査会社ニールセンも、昨年12月にツイッターを使ったテレビ視聴率調査サービス(Nielsen Twitter TV Rating)を発表しましたね。
尾関:「リアルタイムで見てもらう以外はすべて敵だ」という時代は何年か前に終わり、いまは「スマホとテレビは相性がいい」という話にもなってきている。だとしたらそこを合わせて考えていこうというスタンス。それはニールセンも我々も同じです。