ユーザーのつながりを縛る
Pathがユーザーの友達数を150人に限定しているように、SNSというサービスは必ずなんらかの足かせを利用者に強いている。というより、SNSがSNSであるためには、利用者の自由なつながりを妨げるようなルールが必要なのだ。なぜなら、そうでなければSNSはいとも簡単に「出会い系」サービスになってしまうからである。
SNSの根本は、知らない人と出会って、新しく交友関係をはじめることではない。そういった可能性や機能も確かにあるが、基本的には現実社会などですでにつながった交友関係をIT的にサポートする仕組みである。新しい友だちとつながるにも、書き込みのコメント欄などで共通の友だちを介して広がっていくのが理想だ。
例えば、mixiが初期に採用していた「招待制」。これはメールアドレスを知ってる知人を介してサービスが広がっていくという、まさにシックス・ディグリーを絵に描いたような世界観といえるだろう。もっとも、理論通りなら6通先の招待メールで全人類がサービスに加入していないといけないはずだが、残念ながらそうはならなかったようだ。
Facebookの「実名制」も同じである。常に匿名との優劣が議論の的になり「実名でネットユーザーと交流する」という非常識なサービスとしてヤリ玉にも挙げられる。しかし、考え方をひっくり返して「もともと自分の実名を知っている人(スモールワールド)とだけ交流する」サービスと見ればしっくりくるだろう。
Facebookでは、「知り合いかも?」に出てきたといって無差別に友達申請を送っていると、そのうち利用停止にされる。「知り合いかも?」はあくまで「かも?」なのであって、友達マッチングではない。いろいろなアルゴリズムで、知り合い人っぽい人を出してはくるけど、申請するのはその中の本当に友達な人だけにしないといけないという厳しい世界なのだ。
ガチにリアルな友達との会話は「LINE」へ
そして、この縛りをいま最も推し進めているのがLINEで、こちらは携帯電話の電話帳に載っている人、というガチにリアルな友達が並んでいるであろう名簿をベースに人をつないでいる。というより、電話帳以外のつながりを排除することで、気のおけない友達との会話を楽しむところ、というサービスの性格付けに成功しているともいえる。

もっともLINEは、旧来の携帯電話(ガラケー)のキャリアメールやショートメッセージサービス(SMS)の代替となるサービスだけに、携帯電話の電話帳と連絡できなければならないという事情もあっただろう。必要にして十分ということになる。
インターネットのサービスとしてのLINEは、ICQやSkypeといったいわゆる「インスタントメッセンジャー」の系譜に属するが、こういったアプリではよほど仲がよいか、仕事の必要でもない限り、知り合い全員を登録するというのはあまり現実的に考えられない。PCベースとモバイルベースの違いだともいえるだろう。
形を変えて広がるSNS
このように交流の範囲を限定することは、安易な「出会い系」的な利用がルール違反となるようにしておく安全策である。と同時に、サービスの性格付けを明確にし、利用者がサービスをスムーズに使い始められるようにするガイドの役割もある。
一方で、Twitterのような完全に興味(インタレスト)ベースで読みたいひとをフォローしていく仕組みも健在で、モバイルでもInstagramをはじめとして見たい写真をアップしているひとをフォローしていくことでユーザー規模を拡大しているSNSもある。
さらに、匿名あるいは匿名に近いハンドル名で、まったく知らない人たちと自由に意見を交わせるネット掲示板的な世界観も、いま形を変えてTwitterの一部、あるいはmixiのコミュのような掲示板サイト、3Dアバターのコミュニティなどに受け継がれているように見える。
モバイルデバイスという、自分に最も近いところにあるIT機器を介して、どのようなコミュニケーションスタイルが主力になっていくのか。ただサービスの浮き沈みというだけでなく、ウェブ上で人間関係をどう構築していくことになるかが決まってしまいそうな2013年である。