宣伝部長が集まると、何の話をしているんですか?
2月22日に開催された日本アドバタイザーズ協会 Web広告研究会のフォーラムの第二部は、資生堂の石川浩之氏と、花王の本間充氏が対談を行った。
石川氏は、化粧品にとって非常に重要な商品PRにたずさわり、女性誌の編集長、美容ライター、ヘアメイクアーティストに情報を伝える立場にある。そして、日本アドバタイザーズ協会では理事長代行、雑誌委員会の雑誌委員長を務める。
一方、花王のデジタルコミュニケーションセンター企画室長として多忙な日々を送りつつ、日本アドバタイザーズ協会の委員会のひとつ「ウェブ広告研究会」代表幹事を務める本間氏は、みんなが知っているようで意外と知らない「宣伝部長」が日頃どんな活動をしているのか、率直な質問から話を始めた。
石川:日本アドバタイザーズ協会で、わたしと一緒にやっている各委員会の委員長は各企業の宣伝部長なんですが、基本的にメディアの仕事――広告会社、テレビ局、新聞社、雑誌社とのマネジメントに多くの時間を割いています。でも広告を活性化させるには、メディアも大事だが「何を伝えるか」という表現・メッセージの話もしなければと思う。
本間:Web広告研究会は宣伝部長以下の人が多いけれど、日本アドバタイザーズ協会は宣伝部長や役員レベルの宣伝統括の方が圧倒的に多い。そこでウェブの話は出ているようですが、まだまだ温度差があるのではないでしょうか。
石川:正直、ウェブのことが話題になることはあまり多くありません。しかし、デジタルコミュニケーションに投じる金額は大きくなっているので、ちゃんとやらなければという動きは出ていいます。
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今回のフォーラムでは「デジタル・マーケティングでビジネスを成功させるのは宣伝部長です」という宣言を掲げている。ふたりの対話は、宣伝部長だけでなく、企業でマーケティングにたずさわる人たちのコミュニケーションの問題に向かっていった。
マーケターの間に横たわる、言葉の壁
石川:デジタルコミュニケーションの話をするには、それを支える技術についてもある程度は知らなければならない。社内でも、「ユニークユーザー数」「ブラウザ」「クッキー」がどういうものなのか理解してしゃべっている課長以上の人は少ないと思う。
本間:逆に、ウェブ広告研究会のメンバーは「GRP」ってちゃんと知ってるのかという話です。
石川:「GRP」をきちんと定義してしゃべれる人は本当に少ないでしょうね。
本間:意外と共通言語は少ないですね。それが、デジタルメディアと旧来のマスメディアの担当者間の壁をつくっていると言えるかもしれない。情報共有はかなり問題だと思っています。
石川:資生堂は、ホームページを始めたのは早かったが、デジタルのことをやっている人間は社内の中で分散していました。これじゃいかんということで、関連する3つの組織が情報交換会を始めて少しずつ歩調が合ってきた。組織と仕事の組み立て方は、デジタルでは難しいと感じています。
本間:石川さんは、デジタルの担当者に対して、マスメディアの担当者にはこう接したほうがいいよといったアドバイスはされているのですか?
石川:そもそもデジタル以前に、広告業界自体が専門用語を乱発して、一般の人を入れさせないようなところがありました。ですから「なるべくふつうの言葉で理解できるようにしなければ」と言っています。