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「そもそも広告効果測定のために作られたツールではない」アクセス解析ツールの仕組みのキホンを押さえよう【アトリビューション編:第3回】

図解!コンバージョンの重複カウント問題

【例題】
一人のユーザーがヤフーで検索を行い、リスティング広告から広告主サイトAを訪問した。その後、今度はグーグルで検索して、リスティング広告経由で同じ広告主サイトAを訪問し、そのまま商品を購入(コンバージョン)した。

 この場合、グーグルのリスティング広告のレポートにはコンバージョンが1件カウントされます。グーグルはコンバージョンの直前に経由していることもあり、問題なく納得できますよね。

 ではヤフー側のレポートではどうなるかということが問題です。実は、コンバージョン直前はグーグルを経由しているにもかかわらず、ヤフー側でも1件のコンバージョンがカウントされる場合があるのです。これがコンバージョンの重複カウント問題、あるいは、ダブルカウント問題などと呼ばれるものです。

 もう少し詳しく説明すると、ヤフーのリスティング広告をクリックしたのが、コンバージョンが発生した日から30日以内であれば、ヤフー側のレポートにもコンバージョンが1件カウントされます。31日以上経過したあとにコンバージョンが発生した場合にはカウントされません。

 この原因は、コンバージョン計測に利用するクッキー(cookie)というユーザーの行動をトラッキングする仕組みにあります。クッキーは有効期間が設定されており、ヤフーやグーグルのリスティング広告は有効期間が30日なのです。

 この状態では、本当は1件しかコンバージョンが発生していないのに、ヤフーとグーグルを合計すると2件のコンバージョンが発生しているように見えてしまいます。そのため、リスティング広告を担当している広告代理店がヤフーとグーグルのレポートをそれぞれ取得し、合算してコンバージョン数を出すと、広告主企業から見ると自社で把握している数字とズレてしまうのです。自社で把握している数字よりも多い数字が報告されることで、媒体社や広告代理店から出てくるレポートは「水増しされている」「信用できない」などといわれた時期もあったようです。

アクセス解析ツールでの計測の仕組み

 ところで、アクセス解析ツールのコンバージョン数はどのように計測されているのでしょうか。アクセス解析ツールでは通常、セッション単位でコンバージョンがカウントされています。

 ここでいうセッションとは、ユーザーがあるサイトにアクセスし、そのサイト上でおこなう一連の行動のことを指します。サイトにアクセスしてから離脱するまでの行動をひとつの単位として扱っています。また、もしアクセス後にそのサイトから離脱せずにユーザーの行動が止まった場合は、通常30分を目途にセッションが切れたとみなします。つまり、パソコンを使っている途中で席を30分以上離れると、1セッションが終了し、次にまた同じサイトを訪れたら2回目のセッションが開始するということです。

 また、アクセス解析ツールはリファラー(referrer)の情報も取得しています。リファラーとは、ここではリンク元ページの情報のことです。たとえば、広告主企業のサイトにヤフーのリスティング広告経由で訪問した場合、リファラーにはそのヤフーのリスティング広告を経由して訪問したという情報が記録されています。もちろんヤフー以外でも、グーグルの自然検索結果経由/リスティング広告経由、それ以外のバナー広告や広告以外のリンク元なども識別できます。

 つまり、アクセス解析ツールは、セッション単位でリファラーの情報を使い、コンバージョンをカウントしているのです。

 先ほど、媒体社側のレポートでは、ヤフーでも1件のコンバージョン、グーグルでも1件のコンバージョンがカウントされてしまい、合計で2件のコンバージョンがあるように見えてしまう例を挙げました。これをセッション単位でみると、1件のカウントになりますので、詳しく見てきましょう。

 まず、「一人のユーザーがヤフーで検索してリスティング広告から広告主サイトAを訪問」します。この最初の1セッションでは、コンバージョンはゼロになります。

 つぎに、「今度はグーグルで検索してリスティング広告経由で同じ広告主サイトAを訪問し、そのまま商品を購入(コンバージョン)した」とします。2回目のセッションは、グーグルで検索してリスティング広告経由で同じ広告主サイトAを訪問することから始まります。そして、この2回目のセッションで「そのまま商品を購入(コンバージョン)」するので、この2回目のセッションではコンバージョンが1件カウントされます。

 この際、リファラーにグーグルのリスティング広告がリンク元であるという情報が記載されていますので、このコンバージョンはグーグルのリスティング広告経由で発生したとみなします。1回目のセッションがヤフーのリスティング広告経由で開始していたことは考慮されず、ヤフーのリスティング広告にコンバージョンを計上することはありません。そのため、1件のコンバージョンが2件に見えてしまうことはありません。

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アトリビューションの観点ではアクセス解析ツールのデータでは不十分

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この記事の著者

有園 雄一(アリゾノ ユウイチ)

Regional Vice President, Microsoft Advertising Japan

早稲田大学政治経済学部卒。1995年、学部生時代に執筆した「貨幣の複数性」(卒業論文)が「現代思想」(青土社 1995年9月 貨幣とナショナリズム<特集>)で出版される。2004年、日本初のマス連動施策を考案。オーバーチュア株式会...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2013/05/21 08:00 https://markezine.jp/article/detail/17700

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