リクルートが導き出した3つのノウハウ
以上、6つの“落とし穴”の解説を踏まえて、「失敗を含めて独自のノウハウも蓄積してきた」と須藤氏。そして、そこから見えてきた3つのノウハウが紹介された。
1.可視化の力を侮るな
2.時間は有限、意味のあることから手をつける
3.とにかく一気通貫
1.可視化の力を侮るな
最初に挙げられたのは、可視化の重要性だ。例えば須藤氏が「階段グラフ」と名づけた集客ポートフォリオは、横軸に獲得数、縦軸に獲得単価を取り、施策ごとのコストを面積で表す。DMや新聞折込などオフラインの施策も含めて比較できるため、経営層などにも明確に効果を示すことができる。

一方、キャンペーン別にCPAの改善やそのボリュームが分かる「ポートフォリオカーブ」は、現場担当者が見ることでいろいろなアイディアが浮かぶ元になるという。「可視化にこだわると、数字の扱い方が分かるようになる。そうするとアドテクの威力をますます発揮することにつながる」と須藤氏。
2.時間は有限、意味のあることから手をつける
次に「時間もお金も有限。インパクトの大きいところに費やすことが重要」と、須藤氏は指摘する。例えばディスプレイ広告の最適化の影響度を比較すると、ターゲティングが最も効果への影響が大きく、時間・曜日のチューニングはそれが小さい。同じ労力がかかるなら影響度が大きいものから選択することが肝要になる。

3.とにかく一気通貫
そして、一気通貫で運用できる体制が重要だと須藤氏。前述のようなさまざまな取り組みを経て、現在では広告配信における一括運用を設計し、クライアント企業の広告運用にあたっている。 「日本一のネット広告出稿量を誇る当社が長年試行錯誤して得た結論は、『バナー×LP×ターゲティング×掲載面』の最適な組み合わせを見つけるのが重要だということ。それを叶えるためには、ばらばらではなく一気通貫の体制が大事になる」(須藤氏)
アドテクノロジーは万能ではない、マーケターの発想力こそが重要
最後に須藤氏は、冒頭の「マーケターの視点が重要」との指摘に関連して、「アドテクは現時点では万能ではない」と語る。アドテクの役割は、無駄を排除し最速で縮小均衡すること。対してマーケターの役割はクリエイティビティで可能性を拡大することとし、これを繰り返すことで最適化が進んでいくと解説する。
「実際のところ、効果が完全に右肩上がりになる最適化の事例はほとんどなく、多くが上昇・下降を繰り返しながら改善に向かうパターンだろう。一時的な赤字に振り回されず、トライ&エラーを重ねて“知恵と工夫と汗と涙”でアドテクとつき合うとパフォーマンスにつながる」と須藤氏は語り、実践に基づく示唆が多く盛り込まれた講演を締めくくった。