マーケティングの考え方を根底から変える
Responsys Interact 2013では、キーノートやブレイクアウトセッションを通じて「顧客中心のマーケティングへの変革」という統一されたテーマでのメッセージが様々な角度から発信された。
正直なところテーマ自体に新鮮味は無い。今、アメリカではどのテクノロジー会社も、エージェンシーも、広告主もほぼ全てのプレイヤーが顧客体験の創出をテーマに掲げている。しかし、少なくとも筆者は本イベントでこれまでとの違いを感じた。
それはいわゆるOne to Oneマーケティングの世界で語られる、テクノロジーを駆使した際限無きセグメントとオファーの細分化を行い、キャンペーン効果の最大化を目指す方向性ではない。企業が消費者と対話をするようにマーケティングを行い、より深いブランド体験を創出し、結果として企業収益を得るという、マーケティングの考え方そのもののシフトを鮮明に打ち出していたことだ。
そこで基本となるのは消費者とブランドが一緒に作り上げるカスタマージャーニーであり、メール、ソーシャル、デジタル広告、コールセンター、リアル店舗といった個別のチャネルは、その中でそれぞれのコンテンツとして役割を果たす。
ウイリアムズ・ソノマのCMO、Pat Connolly氏の言葉を借りれば、その顧客体験を創り出すのは企業のカルチャーであり、ブランドの行動結果にすぎない。
本イベントを通じて最も耳にした単語はAuthentic(本当の、本来の)、Trust(信頼)、Action(行動)の3つである。最先端のテクノロジーを使い、最高のクリエイティブを作り、盤石のデータ分析基盤を持っていたとしても、顧客を理解し、向き合う姿勢を持っていない企業が本当の顧客体験を創るのは困難だろう。恐らく相当の投資をして作ったブランドストーリーを、拡声器で宣伝する程度となるのが関の山である。
最後に、個人的な思いを書いておきたい。企業から消費者へ主導権が移った新しい時代のマーケティングをリードするのは、古くから「お客様サービス」や「おもてなしの心」を持った日本企業であるべきだと思っている。昔からの伝統を活かしながら、今日のお客様を理解しマーケティングの起点を変革することで、必ず活路が見出せると私は信じている。