カオスパイロットで単身学ぶ日本人女性
カオスパイロットで単身学ぶ日本人女性、大本綾さん。1985年生まれだと言うから、20代後半。この連載の第2回でご紹介したデンマークのビジネスデザインスクール“カオスパイロット”で、「デザイン思考」やイノベーションやクリエイティビティを学んでいます。カオスパイロット初の日本人留学生です。
京都の立命館大学を卒業して、東京の外資系広告代理店へ。けれど、4年で辞めてデンマークのビジネスデザインスクールに飛び込みました。「同僚やクライアントには恵まれ、充実した毎日を送っていたのですが、それが生涯をかけてやりたい仕事かどうか、その答えは見つからない状況で悩んでいました」と大本さんは語る。
「スティーブ・ジョブズの“偉大な仕事をする唯一の方法は自分がしていることをたまらなく好きになること。まだみつけていないなら、探し続けなさい”という言葉を信じて、信頼できる人に相談したり、モチベーションの高い方が集まる勉強会に参加したりしていました」(大本さん)
そんな時、“世界を変えるデザイン展”を通して「デザイン思考」のことも知り、興味を抱いたと言います。そして、さらに2011年3月の大震災が、彼女のそんな気持ちに拍車をかけます。東北の被災地をボランティアとして訪れ、自分の生き方について真剣に考え始めたそうです。
世界を変えることができる“クリエイティビティ”を学ぶ
高校と大学のときにそれぞれ1年間のカナダとアメリカ留学の経験を持つ大本さん。話をしていても、どちらかと言うとオットリした印象の彼女のどこにそんな行動力が潜んでいるのか分からないくらいに、次々と行動を開始しました。
様々なプレゼンテーションを世界中で繰り広げていることで有名なTEDの関連団体でプロジェクトリーダーを経験。そこで彼女は、“クリエイティビティに関する仕事”、“世界を変える”“ソーシャル・イノベーション”などのアイディアと出会います。それらの事柄や「デザイン思考」を学びたいと、世界の学校を調べ、スタンフォードのd.schoolを訪れたり、授業見学もしたそうです。
そして、2011年10月に、仙台で行われたTED関連イベントで、カオスパイロットの卒業生と運命的な出会いを果たします。「カオスパイロットなら世界を変えるために使えるクリエイティビティが学べる」と直感し、カオスパイロットへの留学を目指すことを決めました。「今の自分には夢はあるが、実現するスキルを持ってない」と、当時の彼女は課題に感じていたそうです。
翌2011年の2月には早くも応募。カオスパイロットでは書類審査に通過した人は、同校(デンマーク第2の都市オーフスにある)で行われる3日間のワークショップに参加を求められます。デンマークまで出向きワークショップに参加し、無事に合格通知が届いたのは4月のことでした。7月には4年間勤めた会社を辞めて、8月末に入学を果たしました。