プリミティブなリスニングも効果的
続いては、もっとプリミティブな手法を使ったシーザースホテルの例を紹介。同社は旅行クチコミサイト「TripAdvisor」で、同社が経営するラスベガスのパリスホテルに関する5つ星レビューを読み、ホテルを気に入った理由を分析。その多くが「ホテルから見える景観が好き」というものだった。それも通りをはさんで向かい側にあるベラージオホテルの景観をほめている。
しかし、ベラージオホテルは自社の傘下ではない。そこでシーザースホテルがとったのは、ランディングページに表示する写真を、ベラージオホテル前の噴水をなめるかたちでパリスホテルを撮影した写真に差替えるという方法だった。利用者のレビューを読み、そこにある意見を汲み取る。こんなシンプルな手法でもROIがアップしたとマークス氏は言う。

また、キンバリークラークのおむつのブランド「ハギース」のために、母親が妊娠してから、子どもが幼児期に達するまでの検索の流れを図式化。現代の母親はGoogleでさまざまな質問をする。「妊娠したのかしら」「入学準備はできたかしら」といった具合だ。それを時系列にそってマッピングし、母親と子どもの推移を並列化して示す。どんなコンテンツをどのフェーズの母親に発信したらよいのか、3年分のマーケティングのカレンダーがつくることができるという。

あらゆるものをテストせよ、オバマ陣営が行ったウェブデザインの改善
マークス氏は、オグルヴィ・アンド・メイザーの創設者であるデイヴィッド・オグルヴィ氏が登場する、ある動画を紹介した。オグルヴィ氏はこの中で「あらゆるものをテストせよ」と語る。新しいアイデア、新しいメディアの組み合わせ、すべてをテストせよと。
マークス氏は「テストは非常に重要なもの。デジタル時代の現在は、彼の時代とは違い、瞬時に結果を得られる」と述べ、証券会社TD Ameritradeの多変量テストの例を紹介した。

多変量テストとは、ボタンの色やそこに表示するテキストなど、ウェブページのさまざまな要素を組み合わせてテストを行い、最も評価の高い組み合わせを調べるもの。2つのウェブデザインを提示し、会場に向かってどちらが最も効果的であったか尋ねると、観客の多くは右側(オレンジを使ったメリハリのあるデザイン)に手を挙げた。しかし、正解は左側。オレンジは目立つが危険を表す色でもあるという。最適化した結果、コンバージョンは15%アップし、ROIは43.1%向上した。
また、2008年の大統領選で、オバマ氏がマケイン氏に勝利したときのウェブデザインを紹介。最初のデザインは左側、改善後は右側。主な変更点は、メインの写真を大統領一人だけの写真から家族の写真に変えたこと、ボタンのテキストを「SIGN UP」から「LEARN MORE」に変えたこと。これだけでオバマ氏は多くの支援金を得ることができた。

そして、2012年の大統領選でも、オバマ氏はデータ・サイエンティストのチームを使ってターゲティングを最適化して成果をあげているという。