データサイエンティストにはいろんなタイプがいてよい
押久保:逆に、データサイエンティストの人材要件ってなんでしょうか。以前の取材で、西郷さんは3つのスキルのバランスを挙げられていました。
西郷:データをいろんな角度から分析するスキル、分析のためにテクノロジーを使うスキル、そしてマーケティングやビジネスに対する知識ですね。
押久保:はい、どれかひとつがゼロだったらダメだ、と。「100:90:0」みたいに何かひとつの能力がズバ抜けていることより、「80:80:10」のように少しでもバランスがとれている方がよい、と。
西郷:そうですね。人材要件については日々考えているところでして。最近、海外の企業で同じ役割の人と名刺交換をすると、肩書きに「データサイエンティスト」って書いてあるんですよ。だから「データサイエンティストの定義を教えて」と聞くのですが、実はみんな「分からない」って言うんですよ(笑)。なので、最近は僕自身も困っているんです。
河本:西郷さんの名刺には、なんて肩書きが書かれているの?
西郷:実は最近、「データサイエンティスト」って入れてみたんですよ。
河本:そうなんですか! 実は私はまだ入れていないのですが、英語の名刺にはこっそり入れています(笑)。
押久保:おお。日本でも「データサイエンティスト」という職業が浸透してきた、ということでしょうか。ちなみに河本さんは、データサイエンティストの定義をどう考えていますか。
河本:私もこれまでモヤモヤしてたんですが…実は最近、本を出しましてね。読者の方がAmazonに書評を書いて下さったのですが、そのなかにヒントがありました。
彼曰く、世の中のデータサイエンティストには3種類ほどいるのではないか、と。ひとつはWebビジネスでデータ分析をする人、ひとつはコンサルタント、ひとつは従来型の事業会社でデータ分析をする人。私は3つ目の人なのでは、というのです。
押久保:ほほう。
河本:データサイエンティストっていうと、なんだかWeb上のデータをゴリゴリ分析しているイメージがあったんです。GoogleとかFacebookとか、ネット系の元気な会社にいるような。でも当社では、Webデータではなく気象データなんてものを扱っているし、「なんだか違うよなあ」と思っていたんです。
でもよく考えたら、Googleのデータサイエンティストが、家電メーカーで活躍できるか、といえば別問題ですよね。データサイエンティストにも色々いてよいんだ、と思うようになりました。

押久保:データサイエンティストブームは、これからも続きますかね?
西郷:海外のカンファレンスでは「これはブームではない」と言ってましたね(笑)。私も、意外に続くのではないかと思っています。実際、いま当社は人材不足が課題になっています。
河本:あ、それはうちもそうですね。当社の場合、関連会社のオージス総研に力を借りています。あとね、データ分析を一緒に進めていくビジネス組織の担当者にも、数字に強い人が増えるとよいですね。「数学」はできなくてもよいのですが、現場での経験をベースに、こちらから出した「数字」を肌で理解できる「数字力」があると、よりよい仕事ができるように思います。
押久保:ありがとうございました!
今回の取材にご協力を頂いた河本さんが、講談社現代新書から『会社を変える分析の力』という本を出版されています。ビックデータ、データサイエンティストなど言葉だけが先行しがちな状況の中、本当の意味で企業そして個人が分析力を武器にするためには何が必要なのか、どういうステップを踏めばよいのかなどが、コンパクトかつ丁寧に書かれています。
河本さんご自身が試行錯誤し得た経験が詰まった内容となりますので、データ分析・活用にこれから取り組みたいと考えている方はもちろん、データ分析・活用の文化がなかなか社内に浸透しないと悩んでいる方にとってもオススメの良書となります。ぜひご一読ください。
