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ジェイ・コウガミの“デジタル音楽の新潮流”

なぜ夏フェスは巨大化するのか、音楽の感動体験をライブストリーミングで拡張する音楽業界の狙い

音楽フェスは視聴者に接触する絶好の機会

 ここ数年の間に音楽フェス人気に比例して、いくつかの問題が発生しています。たとえば人気フェスの場合だとチケット代の値上がりや、チケットが数時間で売り切れてしまうことも珍しくありません。そのため、行きたくてもフェスに参加できない人が増えてしまう状況が年々増えています。そのような状況の中で音楽業界やイベント運営者が高い関心を示しているのが、夏フェスの「ライブストリーミング」の投入です。

 今年のフジロックでは、ロックバンドのナイン・インチ・ネイルズのライブをリアルタイムでライブストリーミングするという、過去に前例のない試みが実施されました。これまでフジロックは生中継をする場合でもケーブルテレビで放送のみという形式を取って来ました。それが、今年は会場からYouTubeで配信、しかも誰でも無料で視聴が可能というニュースが飛び込んできたときは、驚きと同時に共感を呼びました。

ライブストリーミングがメリットとなる2つの理由

 ライブストリーミングがメリットとなる理由は、大きく分けてふたつあります。ひとつは、アーティストにとってのプロモーション。フェスに行けなかった熱狂的なファンや、フェスに行くことに抵抗を感じている人が、自宅のPCやスマホからリアルタイムでフェスのライブを視聴できることで、本来なら聴くことすらできなかったライブを体験することが可能になります。好きな音楽を聴いて「楽しい」、「嬉しい」と思わない人はいないはずです。音楽が届いたことによって、視聴者のアーティストへのロイヤリティを高めることがライブストリーミングで可能になります。

 ふたつ目はフェスそのもののプロモーション。特に大型の野外フェスの場合、参加者や音楽ファン、メディアからの高い関心を集めているため、すでに社会的認知度が高くブランド力があります。しかし、音楽フェスは年に一度のイベントのため、年間を通じて継続的なエンゲージメントを音楽ファンとの間に構築することが困難になるという問題があります。

 ライブストリーミングによって、夏フェスの会場では接することのできない音楽ファンとコミュニケーションを図ることができます。これらの音楽ファンは、チケットが得られなかった人や、都合で参加できなかった人かもしれません。おそらく最も多いのは、夏フェスに無関心な音楽ファンでしょう。ライブストリーミングはこの人たちにも音楽を届けることができるのです。

 ライブストリーミングは、夏フェスに関心のない音楽ファンを惹きつけ、「面白い」と興味を持つ機会を作ります。興味関心を感じた視聴者が今後のロイヤルなフェス参加者に変わっていく可能性は大いにあります。新規のファンを獲得しコンスタントな動員へとつなげていくことで、スポンサー企業にもアプローチしやすくなります。視聴者の関心をどう刈り取り、自分たちの夏フェスのファンへと変えていくかは、フェス運営者の戦略の見せ所です。

 しつこいようですが、ライブ中継をしてもCDがすぐに売れたりすることはありません。しかし、ライブストリーミングというプレゼンテーションの場を使って、アーティストの世界観に共感したファンを増やし、ファンからロイヤルファンへつながりを強めていく仕掛けを用意し関係を維持することで、アーティストやレコード会社、マネジメント会社にとっては、従来の流通の仕組みとは異なるアプローチで収益化へとつなげるチャンスが増えてくるでしょう。

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フェスとIT業界が組んで新たなチャレンジのドアを開く

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ジェイ・コウガミ(ジェイ コウガミ)

海外の音楽とテクノロジーの動向を追いかけるブログを書いています。デジタル音楽をテーマに、Spotifyなどの音楽ストリーミングサービスや音楽サービス、新しいテクノロジー、業界の最新動向、クリエイティブなデジタルPR事例、企業の音楽マーケティングなどをいち早く日本で紹介しています。米国オレゴン大学卒。雑誌やオンラインで音楽関連の寄稿記事を書いています。

Twitter: @jaykogami
Facebook: jaykogami
ブログ:http://jaykogami.com

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2013/09/30 13:00 https://markezine.jp/article/detail/18534

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