隠喩(メタファー):イメージや本質が似たものに置き換え
「この機械はタイムマシンです。戻したいと思う場所へ連れて行ってくれるのです」
やり手のクリエイティブ・ディレクター、ドン・ドレイパーは、次々と自身の家族の写真を投影しながら、回転式スライドプロジェクターをそう表現した。
1950~60年代のアメリカの広告業界を描いた傑作ドラマ、『Madmen』の中でのひとコマ、ドレイパーがコダック社に、ネーミングのプレゼンをするシーンである。彼は、その車輪のような回転トレイ(スライドを格納する部分)のついたプロジェクターを、「回転木馬(カルーセル)」と言い表して、クライアントの心をつかむ。エピソードはフィクションだが、コダックのカルーセル・プロジェクターは実在の商品である。
うまいなぁを通り越して、沁みる表現だ。<回転木馬>もさることながら、プロジェクターを<写真を映し出す=過去へいつでも行ける機械>というイメージから、「タイムマシン」と称したセンスに感心したのだ。
こうした、全く違うがイメージや本質が似ているものに置き換えるレトリックを<隠喩(または暗喩、メタファー)>と言う。前回、比喩のひとつ<明喩(または直喩、アナロジー)>について述べた。明喩は<雪のように白い>など形や色、感情などを似ているものに置き換える、あるいは似ているもので形容するレトリックだ。
フォルクスワーゲンをその形状から<カブトムシ>と言ったように、プロジェクターの形状から<回転木馬>と表現したのは明喩とも言える(ドレイパーのプレゼンスピーチを聞くと隠喩とも言える)。
一方、隠喩は<人生とは旅だ>のように、イメージしやすいものばかりではない。映画『フォレストガンプ』で印象的なセリフ、「人生はチョコレート箱のようなもの」といった言葉の置き換えのギャップが大きな表現もある。
大きなギャップは読み手や聞き手に「!」や「?」といった強い印象を与えたり、好奇心を起こさせたりする。それだけに注目せざるを得なくなる、忘れがたくなる、パンチの効いた言葉となる。
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