店舗のリアルな力を使って、拡散するファクトを作る
―― 業務範囲云々ではなく、顧客の体験を第一に考えたら、結果的にWEB事業部が現場に出ていっていた、と。
もちろん店舗の協力ありきですが、それが我々なりの最適な統合マーケティングの形だった、ということでしょうね。
もう一つ反響が大きかったのは、昨年のクリスマスキャンペーンとして展開した企画「MUJI HOMEMADE TOWN」です。当社では毎年この時期、ヘクセンハウス(※ドイツ語で「お菓子の家」)の手作りキットを発売しており、これがとても好評なんです。
昨年のプロモーションにあたり、それまで社内では当たり前だと考えていた「ファンは作る楽しさを求めている」という前提をTwitter上の声から検証したところ、実はそれよりも「ヘンゼルとグレーテルのような世界観が好き」「子どもの頃のことを思い出して懐かしい」といった声がずっと多かった。
そこで、それをヒントに、有楽町店に大きなヘクセンハウスの街のジオラマを作りました。来店した方がその写真をTwitterなどに投稿すると、ジオラマの映像をリアルタイムで表示している特設サイトに反映されます。
その映像や来店客のSNS投稿を表示する特設サイトを連動(参照元:プレスリリース)

――これは、必ず撮りたくなる画ですね。
おかげさまで、狙い通りでした。さすがにいくつもこの規模のジオラマは作れませんが、オンラインとつなげれば海外のお客様にも世界観を感じていただけます。WEB事業部の視点では、店頭のリアルな力を借りて、拡散力の強いファクトを作ったという感じでした。
それにしても、デジタルで完結する施策と異なり、店頭で何かを作るというのは最後の3日間くらいの加速度が濃密ですよね。徹夜で準備しながら、現場で発覚する課題をその場で解決していかないといけない。面白いですが、改めて現場とつなぐのは大変だなと実感しますね。
――こうした施策のKPIは、どのように把握されているのですか?
やはり、可視化して店舗や営業部門と共有しなければその後のナレッジになりませんから、かなり細かく取っていますよ。キャンペーンはA3用紙1枚に、売上から特設サイトのPV、映像の再生回数や接触時間といった数値から、お客様の声などの定性データまで集約しています。
日々の運用としては、ソーシャルの成果を毎週A4用紙1枚にして営業会議で共有しています。でもなかなか、我々が日常的に使っているPVやユニークユーザーという単位は営業部門にはピンとこないようなので、なるべく「この話題にこんな反応があった」「このくらい拡散した」といった話を添えながら、広告媒体費用に換算した数字も出しています。
実際には、単なる露出量の話ではないので、広告媒体換算のような共通言語化が必要なフェーズを早く脱したいと思ってはいますが、まずは社内理解が大事ですから。様子を見ながら変えていきたいですね。