動画広告のブランディング効果を可視化
── 狩野社長がTubeMogulのサービスを日本に持ってこられて2年と聞いております。狩野社長はこれまでも海外企業のサービスを日本に持ってこられた実績がありますが、なぜTubeMogulに目をつけられたのでしょうか。
狩野:1999年にネット視聴率調査のネットレイティングス株式会社(現ニールセン株式会社)を設立し代表取締役に就任しました。ネットレイティングス時代にデジタル広告の評価軸がどうしても定量的な評価に偏ってしまいがちなので、定性的な評価ができないかと課題に感じていました。その中でTubeMogulを知りこの課題を解決できるサービスなのではないかと感じました。
米TubeMogulではGRPに基づいて、動画広告を購入・測定する「ブランドポイント(BrandPoint)」というサービスを提供しております。また、プレロール広告の中でのユーザー調査が可能ですので、ブランドリフト※調査をすることができます。動画広告のエンゲージメント効果を抽象的な形ではなく、シンプルに態度変容度合いを数値で見られることに価値があると思っております。実際、ブランドリフトを調査すると態度変容度合いを確認することが可能です。
ブランドリフトとは、例えば購買意向を調査する際に、ブランディング広告に接触した人のグループと接触しなかった人のグループのパーセンテージを比較し、後者が前者より上がった(lift)ことを示す指標のこと(参考記事)

また、米国ではテレビ広告と動画広告を連携させた広告出稿が盛んですが、その結果テレビ単体の出稿よりも動画広告を連携させた取り組みの方が、ブランドへの認知、好感度、メッセージの伝達度合いなどが高くなっているという調査結果も出ています。現状ではテレビ広告はマスへのリーチ、動画広告はよりセグメントした形でのリーチという利用のされ方が多い傾向にあります。

TubeMogulでは今までできなかった動画広告でのオーディエンスターゲティングでの配信と自社のKPIに則ったバイイング(RTB)が可能なため、最適な動画広告配信環境が整備できています。また最近評判がよいのがインタラクティブプレロールというサービスです。プレロール動画広告の1レイヤー前にテキストベースでの機能訴求やECサイト内の商品露出、またはIPアドレスを活用したリアル店舗送客をすることも可能です。米国では、このような多岐に渡る機能に対してご評価いただき、継続的にご活用をいただいている状況です。

これからの展望、マーケットを拡大させるための3つの条件
── 最後にこれからの展開予想についてお願いします。
狩野:希望的観測もありますが(笑)、2014年は2013年に比べてマーケットが急成長する可能性が高いと思っています。そのためには、効果測定、広告枠の購買環境の整備、広告配信先の拡充の3つがポイントなのではないでしょうか。
徳久:私も同意見です。効果測定に関して言うと、当社はViewable Timeベースの評価軸について研究している最中です。どのような判断軸でその動画広告を成功と見なすのか。先行する米国を参考にしつつ、日本でも体系だった評価軸を作っていかなければなりません。動画広告独自の広告評価指標を定量的・定性的に確立させ、ROIを明確にする土壌が整えば、予算投下しやすくなると考えております。


狩野:新しい評価軸をどうするべきなのかを議論するために、TubeMogulもIAB(Interactive Advertising Bureau)と一緒にコンソーシアムを立ち上げています。広告枠の購買環境に関しては、いかに広告主サイドにシンプルで広告枠の購買をしやすい環境を提供できるかという点にあります。
その方法としてTubeMogulでは先にも申し上げましたブランドポイントというソリューションを提供しております。ブランドポイントは計画・購入を立てる際に目安にもなりますので、購買を促進させるきっかけになるのではと考えております。
最後に広告配信先の拡充ですが、動画広告の配信先が増えないと結果的に市場は育ちませんので、業界をあげて動画広告市場を盛り上げていきたいですね。例えば米国では新聞社の記者がビデオカメラを持ち撮影して、それを掲載するので動画コンテンツが増えている状況です。動画広告のCPM(1,000インプレッション当たりの単価)はディスプレイ広告の10倍以上という試算もあり、マネタイズという面でも動画コンテンツを増やすことには意味があると感じますので、この流れを業界全体で加速させていきたいと考えております。