視聴者サービスを向上させ、同時にメディアの広告収入アップを図る
また、閲覧デバイスを増やすことにより、新たなマネタイズに取り組むメディア企業の事例もある。仏テレビ局の傘下にあるスポーツ専門放送局EURO SPORT NETWORKは米国Universal Sports Networkの「ユニバーサルスポーツ」にコンテンツを提供しており、有料チャンネルで放送したコンテンツをWeb上でも配信をしている。
「Web上で、最初の1分半は誰でも無料でコンテンツを視聴できます。その後、衛星放送やケーブルテレビで閲覧契約をしているか、という確認画面が表れ、契約している場合はそのまま視聴できる仕組みです」
「TV Everywhere」というこのサービス。もちろんサービス名の通り、視聴者は「どこからでも」視聴が可能になっている。このサービスのメディア側の狙いは、視聴者がアクセスできるデバイスを増やすことで全体の視聴量を増やし、広告収入増加につなげることだ。これはメディアと視聴者の双方にとってWin-Winの状態を創出していると言えるだろう。
視聴者が見ているのは“テレビ”ではなく“コンテンツ”
このような視聴デバイスを増やすという取り組みは、地上波のテレビ放送でも行われている。ニュージーランド国営放送局TVNZでは、地上波で見逃したコンテンツを視聴者がWeb上で後から楽しめるように「CatchUp Premium Contents(キャッチアップ プレミアムコンテンツ)」を開始した。その結果、テレビも合わせて昨年対比で70%も視聴量が増加した。さらに、Web上ではターゲットに合わせた広告を配信できるので、テレビ広告のおよそ2倍の単価を値付けすることに成功している。
かつてTVNZは独自で動画配信システムを開発していたが、エラーも多くクレームの原因になっていた。それを今年から同社の「Video Cloud」に切り替えた後は、エラー率は0.02%に低下し、クレームも激減したという。
例に上げたように、メディア企業が新たなビジネスモデルを確立できた要因について、「テレビに固執せずにデバイスを広げたことだ」とジェフ氏は語る。「デバイスを広げることで、新しい視聴者層を獲得することができました。忙しいビジネスマンが通勤中にコンテンツを楽しむといった新たな視聴スタイルも今日では確立しています。さらにテレビとは異なり、PCやモバイルデバイスではパーソナライズ、またターゲティングして広告を配信することができるので、広告単価を上げることができるのです」
「テレビCMが効かなくなった」「若者がテレビを見なくなった」としばしば耳にする。その解決の糸口をジェフ氏は述べる。「そもそも、我々は“コンテンツ”を見ているのであって、“テレビ”を見ているわけではないのだ」
日本におけるスマートフォンの普及率が約5割(IDC Japan調査/2013年6月)に達していることからも、テレビというデバイスに固執するのではなく、モバイルデバイスに対応していくことにメディア企業の新たなマネタイズの芽があると言えるだろう。