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DMPとオーディエンスデータ

DMPとオーディエンスデータの活用を理解しよう


「データセラー型」と「プライベート型」DMPの2つの種類

 冒頭でも触れたとおり、市場には数多くのDMP製品が登場し、マーケティング担当者は、数多くの製品を前に何をどう判断すればよいのか躊躇してしまう状況だろう。

 本連載では、DMPを「データセラー型」「プライベート型」の2つに分けて説明する。双方ともに個人にターゲティングすることを前提としており、オーディエンスデータを取り扱うツールである。世に出ている製品の多くはデータセラーDMPで、プライベートDMPを出している事業者は少ない。この製品の種別は、前述の“主語”を明確にすると分かりやすいだろう。

データセラーDMP

 データセラーDMPとは、要はオーディエンスへの広告配信プラットフォームとしてのDMPだ。データセラーDMPは、「市場」に存在するオーディエンスデータを取り扱う。複数のサイトにおける接触履歴データを複合的に分析してターゲティングできるようにするプラットフォームだ。

 データセラーDMPの存在価値は、いかに質の高いオーディエンスデータと、その量を接続対象として保持するか、配信先としてバリエーションに富んでいるか。つまり主語はオーディエンスデータを取り扱う「DSP/SSPをつなぐ市場」である。

プライベートDMP

 プライベートDMPは主語が「広告主」となる。自社で保持するオーディエンスデータの「質」を分析し、自社とどのような関係性を持っているかの把握が重要になり、そのうえでユーザーとどのようなコミュニケーションシナリオを構築していくかが命題になる。つまり、自社オーディエンスデータの「掘り起こし」である。

 プライベートDMPは、市場のオーディエンスデータ以外にも自社で保持するさまざまなデータを統合する“ハコ”として機能する。まさにプライベートなデータマネジメントを実現するプラットフォームなのである。

 データセラーDMPとプライベートDMPのどちらが良いというものではなく、用途が異なると考えた方がよい。データセラーDMPは主に新規顧客獲得のための広告配信プラットフォーム。プライベートDMPは自社の顧客価値(LTV=ライフタイムバリュー)の最大化のための自社オーディエンスデータの統合管理プラットフォームという役割だ。

 日本では、この2年間で両方の製品群が同時に登場したが、自社のオーディエンスデータの有効活用という視点でお勧めしたいのは、プライベートDMP製品の導入、それからデータセラーDMP製品への導入に進むというステップだ。

顧客シナリオ構築がマーケティングの要(かなめ)

 少々、話を身の回りのことに置き換えて考えてみよう。

 あなたがある商店街に店を構えた魚屋さんの店主だとする。長年、店を開いてきたあなたの頭の中には、お客さんごとの家族構成も好みもインプットされている。だからこそ、あるお客様には「旬な鮭を使ったムニエル」を薦めたり、また別のお客様には「魚介鍋のセット」を薦めたりといったことができる。前者は鮭が好物の配偶者がいることを知っており、後者の買い物かごにはネギと白菜が入っていたのが見えたからだ。だが、これが遠方からも大勢押し寄せる郊外型のスーパーマーケットだったらどうだろう。もはや商店街型のOne to Oneコミュニケーションは難しい。

 マーケティング施策を構築するとき、「誰に投げるか」という検討を進める上で、「何をどう投げるか」という話に必ず帰着する。つまり、顧客とのコミュニケーションシナリオをどう描くか?というワークだ。事業会社のマーケティング担当の方々は、日々、試行錯誤を繰り返しているだろう。

 このコミュニケーションシナリオを考えるためには、自社内に蓄積されている顧客のデータを掘り起こすことから始まる。各行動の関係性を掘り起こし、関係性ごとにシナリオが構築されていく。自社サイト内に何を経由して訪れたのか、どのページを見たのか、何を購入したのか、どのメールに反応したのか、何回目の訪問で購入してくれたのか。こうしたデータを横串にして、1人の人格として統合し、シナリオを描けるのがプライベートDMPの利点である。

CRMとの違い

 しかし、以前からこうしたデータ活用は行われていたのではないか、という指摘があるかもしれない。「CRM(Customer Relationship Management)マーケティング」と何が異なるのか、という疑問だ。

 CRMマーケティングはあくまで「利用できる顧客情報」をもとにシナリオを描いていた。プライベートDMPでマーケティングに活用できる材料(データ)は、企業Webデータの基本3軸である、「広告データ」「Webログデータ」「CRMデータ」の3つ。これに自社ECの購買データや外部データを接続することで、自社の売上構造や、気象や位置情報との相関性を考慮した施策設計が可能になる。プライベートDMPの基本機能は、ばらばらに存在する複数データの統合、分析であり、施策に合わせて抽出、運用を行うことになる。詳細については次回説明しよう。

 プライベートDMPは、ユーザー像を掘り起こす分析メッシュがより細かくなっており、かつ、統合的になっている点で従来のアクセス解析やCRMマーケティングとは大きく一線を画すことになる。

まとめ

 広告技術の進化の末に生まれたDMPは、広告技術の枠を超え、企業におけるデジタルマーケティングのインフラ基盤として期待されている。

 DMP時代の到来は、「投げる」マーケティングから、「掘り起こす」マーケティングへの変化である。DMPの本質的な役割は、自社のオーディエンスデータを堀りおこし、精度の高い顧客シナリオを作りだすことができることにあると考えている。

 統合されたデータは、企業とユーザーのより深い関係性を構築することができるのか?次回以降で、このツールの裏側、テクノロジーについて解説したい。

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この記事の著者

福田 晃仁(フクダ アキヒト)

株式会社 学研ホールディングス CMO
株式会社 学研エデュケーショナル 取締役 / 株式会社 学研プラス 取締役 /
株式会社 学研教育みらい 取締役 / 株式会社 地球の歩き方 取締役

総合代理店 / ITベンダー / 事業会社のキャリアを持ち、一貫してマーケティングとTechの両面によ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2018/04/19 18:12 https://markezine.jp/article/detail/19009

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