100%文系女子がIT企業に就職
粟飯原理咲氏が社長を務めるアイランド株式会社は、「おとりよせネット」「レシピブログ」「朝時間.jp」という女性に人気のサービスを運営している。的確に先を読み、時代をつかむ手腕を持つ女性起業家でありながら、その語り口にはどこか初々しさが漂う。だが、その社会人としてのスタートは失敗の連続だった。
― インターネットが普及し始めた1996年に社会人になられましたが、もともとIT系の仕事を希望されていたのですか?
いえ、大学時代は100%文系で、NTTコミュニケーションズに就職して初めてインターネットに触れました。もちろんHTMLも分かりませんし、MacOSのことを「マッコスって何ですか?」と質問したり(笑)、社内ではきっと呆れられていたと思います。
― ネットサービスの企画に携わることになったきっかけは?
当時所属していた部門が手掛けていたオンラインショッピングサービスについて、分からないなりに「この画面遷移はおかしいな」と思っていましたが、知識のない新入社員が言ってもおそらく誰も聞いてくれませんよね。それを何気なく社外の人に話したところ、「消費者のネットワークを作ってフィードバックすれば?」と言われたんです。
そこで他のネット系企業の女性に、「オンラインショッピングについて女性視点で語るコミュニティに参加しませんか」とお声かけしたら300名ほどの方が参加してくださって。粟飯原に聞けばユーザーの声を把握できると、社内からも意見を求められるようになりました。
そのコミュニティで話し合ったことはオープンに発信して、社会人1年目の終わりに『成功するオンラインショップ』(東洋経済新報社)という本にもなりました。技術を知らない文系女子でも会社や社会に価値を生み出せる。「インターネットって面白い!」とハマったことが、ネットサービスを企画するきっかけになっています。
「どうしてもこのサービスをやりたい!」という熱意が裏目に
― ITに詳しい同期の方とは違うかたちで自分の企画を実現できた。それは大きな自信になったのではないでしょうか?
それがひとつ大失敗しまして。どうしても提案したいサービスがあったので、部長をトイレの前で待ち伏せまでして「このサービスをやりたい!」と訴えたのですが却下されて。でもあきらめきれずに、自腹でシステムを作ってデモを見てもらったんです。そうしたら、尊敬している部長から、ひとこと「君は卑怯だね」と。
「面倒を見ている新入社員が自腹を切ってまで提案してきたのを断るのは、上の者にとってすごく辛いことだよ」と言われたとき、「これはごり押しだ」と猛省しました。部長からは「予算をあげるから気が済むまでやってごらん」と言われたのですが、会社に必要とされていないサービスを無理に通しても仕方ありません。改めて話し合い、個人的に展開することにしました。そのサービスは利用者が18万人ほどになり、最終的に楽天に買われました。結果的に、個人でやるという判断がこのサービスにとってよかったのだと思います。