意志が未来の舵を切る
調査によって、現在、どういうブランドであるかを確認し認識ができましたら、将来、どういうブランドになりたいかを設計するステップに入ります。このとき、大切なのは、どうなりたいかという企業サイドの意志です。もちろん、全く脈略のない実現不可能なものではいけませんが、ここで大切なのは、ブランドのこれまでの経緯や歴史という偽ることのできない事実、調査・監察などで把握できた事実です。
これらの事実に立脚し、頑張れば手が届きそうな、ちょっと先の夢の像を描くことこそが、ブランド・ビジョンづくりの微妙なさじ加減であり、醍醐味であると言えましょう。経営者の考える意志、社員の総意として一致団結できる意志で、企業活動の原動力としていくのです。ここに、ブランドが無形の経営資産であると称される理由の一端があるのです。
単に設計と申し上げても、イメージが沸きにくいと思いますので、自分たちはこのブランドを通して、どのようなお客様に、何を提供しているのだろうか? と自問自答してみてください。
これはアタマの体操に似た発想の訓練のような作業かもしれません。あくまでも一例としてですが、ある電話のブランドは、すぐに会うことのできないが、意思や感情を伝達したい人に対して、空間を越えたリアルタイムなコミュニケーションを提供していると考えることができます。ある缶チューハイのブランドは、20代の独身OLにとって、一日の疲れを癒す自分へのご褒美を提供しているとも言えます。あるインターネットの本屋さんは、平日は仕事で忙しく、休日は家族サービスに余念のないお父さんのための、気分転換や息抜きをデリバリーするサービスと考えることもできます。
このプロセスで重要なのは、自分たちのブランドが、どんなお客様のために存在するのかを強く意識して、そのお客様に、究極的・本質的には何を提供するのかを、業種カテゴリーにとらわれずに、イタコの術(レッスン6をご参照ください)を駆使して、お客様目線で考えるということです。繰り返しになりますが、ブランドとはお客様のアタマの中に存在するものですから、お客様の気持ちになって考えることが、最大のポイントなのです。

ブランドとは、企業から“お客様へのプレゼント”のようなものだと考えてはいかがでしょうか? お客様が喜ぶ視点を考えて、どのようにすれば「ありがたいなぁ」と感じてくれるのかを考えるからです。それは、モノづくりをしているメーカーであろうと、サービス業であろうと、業種に関係なく共通の、企業活動の究極の目的ではないでしょうか? 皆さんは、どのようにお感じでしょうか?

どのようなお客様のために、あなたのブランドは存在するのでしょうか?
そのお客様に、あなたのブランドは何を提供するのでしょうか?

