データセラーDMPの人格統合リスト
CookieSyncによるデータ交換/同調によって同一人物であると判定された“あるユーザ”をキーとして、名寄せ(つなぎ処理)がされ、データが網羅的に集積される。集積された情報はやがて、インターネット上の行動ログとして人格統合されていく。そして、他の“あるユーザ”にも同様の処理を施してマッピングしたリストが「オーディエンスデータ」の本体であり、「データセラーDMP」の本体でもある。

※このリストは、DSP/SSPの付与したCookieと、サイトのペアリングの結果リストであるため、
リストに個人情報は含まれない。
このマッピングされたリストは、言い換えれば「個人名を特定しない、各人のインターネット行動ログ」リストである。データセラーDMPはこのリストを使ってマーケティングを行う。例えばターゲットの行動に似たログを持つユーザを抽出する、「オーディエンス拡張」といった手法がある。
3rd Party Cookie利用のこれから
数年後、2013年前後のこの時期を振り返ることがあれば、“Cookieを媒介として、ユーザの人格統合を行っていた一時期”という位置づけになるかもしれない。
現在、この3rd Party Cookieの利用は、インターネットブラウジング全体の傾向として、縮小傾向にある。なぜなら、3rd Party Cookieは、ユーザから見れば、意図しない、プライバシー漏えいに抵触する仕組みであり、主要ブラウザ(Safari/Firefox/Internet Explorer/Chrome)各社は、利用を停止させる方向で動いているためだ。しかし、ユーザにとって恩恵もあることから、機能削除ではなく、機能の選択的停止というかたちをとっている。
この3rd Party Cookieの代替技術のひとつとして、GoogleやMicrosoftなどが開発を進めている仮称「AdID」がある。詳細はまだ語られていないものの、これらの企業が抱える顧客情報と膨大な行動ログを、AdIDをキーとして行動分析や名寄せをすることは、現在のアドテクよりもシンプルに可能であり、恐らく2014年中には少なくともテスト、あるいはベータ版のリリースが行われると見られている。
とはいえ、2013年12月の段階で「まだ開発初期段階」とのコメントがあるほか、Googleの影響力の拡大に対する懸念や「そう簡単に移行できないはず」という声もあがっている。現状のAdエコシステムや広告団体からの大きな反発も予想されており、今年以降、順調に取って代わるといった状況ではないと思われる。
国内企業の動き 「楽天DSP」
近似する国内事例として「楽天DSP」が2013年9月にリリースされた。これは、楽天会員データと楽天内の行動履歴をターゲティングのベースにした、3rd Party Cookie不要のDSPである。前述したGoogleやMicrosoftなどとはベースとなるデータが異なるものの、巨大会員基盤を活用した広告メニューという意味で、新しい最適化技術と捉えることができる。つまり、巨大会員基盤を持つインターネットサービス事業社は、行動履歴と掛け合わせることで、会員クラスタをメニューとして販売することが充分に可能ということであり、実際にメニュー化する動きが始まっている。
会員の行動履歴データは言うまでもなく、データ自体が価値を持つ門外不出の貴重なデータである。
検索エンジン大手であるGoogleは、2013年7月頃から「検索ワードのSSL化」を実施し、ユーザの検索行動の開示を停止した。これによって、リファラーに検索キーワード情報が書き込まれなくなり、企業Webサイトはアクセス解析をしても自社サイトを訪問するユーザの検索ワードがわからなくなったのである。この変更は、ユーザのプライバシー保護がオフィシャルな名目となっているが、一方でGoogleの資産保護のための措置であり、前述の「AdID」のための布石であると見る専門家も多い。
アドテクノロジーは進化/変遷が速い。次の転機となる3rd Party Cookie代替技術について注目が集まっている状況である。