「Cookie媒介技術の集大成」としてのDMP
ある日ブログサイトを見ていると、他のECサイトで“お気に入り”に入れたアイテムが「買い忘れていませんか」というメッセージとともに、右側のバナーエリアに表示されている。これはリコメンドバナーと呼ばれる広告商材でリターゲティングという技術によるものだ。
仮にECサイトを「サイトA」とし、ブログサイトを「サイトB」とする。サイトBにサイトAの商品情報を表示させるには、それぞれのサイトに訪れた人が同じ人物であるという情報が相互に交換されることが必要になる。そのために行われるCookieを交換、同調する技術のことを総称してCookieSyncという。データセラーDMPも、このCookieSyncを利用しており、情報交換の媒介に「3rd Party Cookie」が使われるというわけだ。
データセラーDMPは、オーディエンスデータを統合するために2段階の処理を行っている。
ステップ1: CookieSync
サイトAとBの情報を交換したのと同様に、アクセスしたユーザが、“同じ人”と判別できたサイトを、サイトC、D…いったかたちでペアリングを量産していく。
ステップ2: 名寄せ
ペアリングしたサイトを、ユーザをキーに名寄せ(つなぎ処理)を行って、様々なサイトに接触する“あるユーザ”を、1人の人間として人格統合する。
今回はさらに一歩踏み込み、この「CookieSync」と「名寄せ」の仕組みを解説する。
データセラーDMPのCookieSyncと名寄せ
CookieSyncは、やや複雑なフローを経る。ここでは全体像を理解するために簡易的に解説を行うが、各ステップは省略せずに解説したい。
データセラーDMPにおけるCookieSyncは、DSPとSSPの間で行われる。Cookieに蓄積されるユーザ情報の交換は下図の①~⑤のフローを経る。前提条件として、サイトA(ECサイト)は広告出稿のためにDSPタグを埋め込んでいる。また、サイトB(ブログサイト)はバナーエリアを媒体化し、SSPタグを埋め込んでいる。

フロー① DSPによるCookieの付与とペアリング

サイトAにアクセスすると、
・サイトAのCookie(1st)
及びサイトAのコード内にあるDSPタグによって
・DSPのCookie(3rd)
の2種類のCookieが付与される。
この時DSPは、サイトAに埋め込んだタグによって、サイトAのCookieを取得する。
DSPは「あるユーザへ発行したCookie」と「サイトAから取得したCookie」をペアリングして、あるユーザがサイトAに接触した情報を記録する。
フロー② SSPによるCookieの付与とペアリング

サイトBにアクセスすると、
・サイトBのCookie(1st)
及びサイトBのコード内にあるSSPタグによって、
・SSPのCookie(3rd)
の2種類のCookieが付与される。
フロー①と同様にペアリングを行い、SSPはあるユーザがサイトBへ接触した情報を記録する。この時点では、①と②でそれぞれのサイトにアクセスした“あるユーザ”が同一人物であるということはわかっていない。サイトBは、バナー枠(青色部分)をSSPに提供しているため、広告枠のオークションが発生する。
フロー③ オークションの結果、DSPから広告が配信される

サイトBの広告枠に表示させる広告を決めるため、オークション(ビッディング)が執り行われ、勝利DSP(サイトAのDSP)が確定する。確定後、DSPからサイトBの広告枠へ素材が送られる。
フロー④と⑤ 同一人物判定と最後のペアリング

サイトBに訪問中のユーザのブラウザに対して、SSPが勝利DSPへ応答するようにうながす。応答時に、SSPがフロー②でユーザへ付与したCookieも一緒にDSPへ送付する。勝利DSPは応答してきたブラウザ内にフロー①で発行された“あるユーザ”のCookieを発見する。ここで、同一人物判定がされる。
最後にフロー⑤で、DSPは「サイトA」と「あるユーザ」のペア情報と、「SSPがある人に渡したCookie」をペアリングする。「サイトAに訪れたあるユーザ」 と「SSPから応答してきたユーザ」が同一人物であるということを認識し、リストに保存する。
以上がCookieSyncによる、別サイトにアクセスしたユーザの人格統合の一部始終である。ビッディングに勝利することで提供してもらった“道”によってドメインの壁を越え、3rd Party Cookie同士が情報を交換・同調させるのがポイントになっている。