アプローチ内容そのものを顧客視点に
豊富なデータを基に、最適な内容とタイミングでOne to Oneのアプローチを図ると同時に、現代の消費者のメディア接触に適合したクロスチャネルによるアプローチを可能にするCMSだが、北村氏はこうした取り組みが「顧客視点にたったアプローチへの変化」であることを強調する。
「CMS導入を検討する企業から、『メールの送りすぎを制御して離反を防ぎたい』とよく聞きますが、そもそも離反の根本的な原因は、送りすぎること自体というよりは、一方的な投げかけでコミュニケーションが成立していないことにあると考えています」
メール配信システムでのアプローチは、企業が訴求したいことを訴求したいタイミングで伝える。対してCMSでは、ページ閲覧など顧客のアクションを起点とし、企業側がリアクションをし、そこから更なる顧客のアクションを誘発する。いわば対話のようなやり取りを成立させることを目的とする。「一回あたりのメールの効果を追求する旧来のメール配信と異なり、連続性をもったコミュニケーション効果の追求が可能になります」
一方、CMSを活用する上では、あわせて考えなければならないこともいくつかある。北村氏は一例として3つを挙げる。
1.デバイスへの最適化
2.ユーザーのプロファイリング
3.一意特定(異なるチャネルで接するユーザーが同一人物かどうかを特定する)
総合的にクロスチャネルマーケティングを支援
例えば2012年6月、メールの開封デバイスとしてモバイル端末がPCを逆転したというデータが出された(米Litmus調べ)。こうした流れに対応するため、エクスペリアンジャパンでは、各デバイスに最適化したレスポンシブデザインを提案。同社が支援しているインナーウェア販売のピーチ・ジョンでは、スマートフォンで閲覧されるメールの表示を最適化した結果、クリック率が1.7倍、コンバージョンは1.2倍に伸張したという。
また、一般的に非アクティブユーザーに関する情報量は少ないので、プロファイリングが難しい。同社ではこれに、消費者セグメンテーションデータ「Experian Mosaic Japan」を提供することで対応。「同データの日本版では、国勢調査にさまざまなデータを加えて分析し、消費者を14グループ、52タイプ、220分類にセグメントしています。これを用いることで、多くの情報量を得られていない非アクティブユーザーに対しても、プロファイリングおよびターゲティングが可能になります」と北村氏。
ほかにも、さまざまなチャネルで接触するユーザーの中から、同一人物を一意に特定する技術や、CMS運用という新たなフェーズにおける企業内への早期のノウハウ蓄積など、CMSを活用するにあたり企業が直面する課題は少なくない。さらに日本市場は、フィーチャーフォンやモバイルキャリアへの対応といった特殊な状況がある。「それらを十分考慮しながら、クロスチャネルマーケティングにおける総合的なサポートを行っていく」と、北村氏は講演を結んだ。