企業のマーケティングにおける基幹データベースを構築するCMS
その後は、シナリオに沿って再度メールを配信したり、DMを送ったり、あるいはコールセンターへリストをアウトプットしたりと、クロスチャネルの展開へ。それに対する顧客の挙動が、またデータベースへ反映されていく仕組みだ。一方で、従来のメール配信システムはというと、まず基本的なチャネルはメールに限定され、シナリオもCMSほど柔軟には設定できない。
「ステップメールと呼ばれる、登録後1週目、2週目など時間軸を追って異なる内容のメールを送る、あるいは、お誕生日メールなどのような比較的シンプルなシナリオは実現可能です。しかし、そもそもメール配信システムは基幹システムに対する従属的な位置づけで活用されることから、ログ解析などのサードパーティーを取り込むことはせず、さまざまなデータソースを横断した抽出条件に基づくシナリオの作成までは行えません」
ここで北村氏は、一例として5月に国内ローンチ予定の「Cross-Channel Marketing Platform」のインターフェースを紹介する。性別や購入額などの一般的なデータはもちろん、過去に特定のキャンペーンメールの受信量が一定量未満の人、特定のページへアクセスした人などの生のアクションデータまで含めて抽出条件を設定。そして、リアクションに応じてさらにどういうコミュニケーションを取るか、細かに設定していくことができる。
顧客接点を単一チャネルに限定するのは企業論理
こうしたアプローチを包括的に管理できることが、“キャンペーンマネジメント”システムと呼ばれる理由だろう。北村氏は「キャンペーンマネジメントは、チャネルを横断したシナリオという意味で『クロスチャネルマーケティング』、またさまざまなシナリオを自動で実行させることが特徴である点から『マーケティングオートメーション』と言い換えることができますが、実現手段としてはいずれもCMSを指します」と補足する。
このように、きめ細かなアプローチを効率的に行えるCMSは、当然ながら多くの企業で導入が進んでいる。現在でも、エクスペリアンジャパンでは「既存のメール配信システムと入れ替えたい」と相談されることも多いというが、北村氏は「メール配信システム同士の入れ替えということとは異なる」と指摘。
「前述のように、CMSではあらゆるデータを統合し、マーケティングの基幹となるデータベースを構築できます。メール配信システムの場合とは異なり、CMSはいわばシステム面で中心的な役割を担うことになるので、そのために諸々の周辺システムの改修や、場合によって運用の在り方も考え直す必要があります。それらは企業がCRMにおける取り組みを新たなステップへと進めるために越えるべきことの一つです」
また、北村氏は併せて「単一チャネルに限定された取り組みは、企業視点に終始せざるを得ない」と指摘する。現代の消費者は様々なチャネルをシームレスに行き来し、企業からのメッセージを受け取っている。