自社が持つ膨大な“行動”データに“人格・顔”を紐付ける「Genometrics」
インテージはSCI-personalを通して蓄えてきた「購買データとプロファイリングデータを組み合わせたデータベース」を、もっと別の形で利用できないかと考えた。そうして生まれたのが、事業会社などが保有する会員の"購買履歴や小売業の持つID付きのPOSデータ(ID-POSデータ)、ネットのアクセスログなどの“行動履歴”データに“人格・顔”を紐付け、「どんな属性の生活者がした行動なのか」と購買データ×プロファイリングデータで分析できるようにするビッグデータ連携ソリューション「Genometrics」だ。
仕組みとしては、SCI-personalで取得したデータから、「製品Aを買った人aは、このような価値観を持つ傾向がある」という情報(=「Product DNA」)を抽出する。
Product DNAとは、年齢・性別といった基本データだけでなく、食生活、健康志向、情報感度、商品感度、消費意識などの多岐にわたる価値観・ライルスタイルを数値化したもの。aが買った製品をすべてリストアップし、全製品のProduct DNAを加味していくことで、aの年齢・性別や価値観(=「Customer DNA」)を推測する。
Genometricsは、製品だけでなくWebサイトにも対応。Product DNAと同じ手法で「サイトDNA」を定義し、そこからCustomer DNAを推測することも可能だ。
片桐:お客様のニーズとして、「会員データの分析を、会員の“自社の外でのこと”も含めてできるといいんだけどね」という声がありました。お客様が求める「自社の外」にある情報の1つは、生活者の詳細なプロファイリングデータ。購買データと会員の性別・年齢などの基本データ情報はあったとしても「この人は、健康意識が高いのか、価格志向は強いのか、品質を吟味する人なのか、情報感度は高いのか」といった会員の情報まで持っている企業はまずないでしょう。一方、SCI-personalで取得しているデータは5万人分しかありません。「渋谷店・新宿店・銀座店それぞれで、どんな人がどのような買物をしているのかを分析したい」といったお客様の要望には応えられません。「それなら、両者のいいとこ取りができないか」と考えて開発したソリューションが「Genometrics」なんです。
元田:個々の製品にDNAがあると考え、そこから利用者のDNAを推定するのはおもしろいですね。今までは利用者の属性から「どんな人が買っているから、こんな傾向のある製品だろう」と製品の属性を推測していましたから、流れが逆になるわけですね。事業会社からすると、ID-POSのような購買履歴しかもたないデータベースを基にして利用者像を探ろうとするのは難しいと考えていました。利用者に「あなたはどんな価値観を持っていますか」と尋ねても、十分な量の回答を集めるのに手間が掛かりますし、そもそも「アンケートに協力的な利用者の属性」というバイアスが掛かってしまいますから。その点、Genometricsは新たにアンケートを取らなくても、十分なプロファイリングデータが手に入るところがいいですね。
片桐:お客様が求める「自社の外」にあるもう1つ情報は、競合店舗での購買行動です。Genometricsでは、購買履歴を元に「このお客様は、他店も含め、どのようなお買い物をしているか?何にどのくらいのお金を使っているのか?」が高い精度で推定できます。例えば、ある女性がドラッグストアでファンデーションやアイシャドーなどを中心に化粧品類をそれなりの金額規模で買っているとします。そのお店の会員データ上では、その女性は優良顧客です。しかし、Genometricsを使いその女性の買っているファンデーションやアイシャドーの銘柄から推定すると、もっとたくさんのお金を化粧品に使っていて、そのドラッグストアが獲得できているのは、その一部に過ぎない、といったことがわかります。さらに、「高い確率でフレグランス商品を購買し、選好されている銘柄は何か?」まで高い精度で推定が可能です。会員データからそんな女性が多いとわかれば、「フレグランスを積極的に仕入れるようにしよう」「陳列場所をファンデーションやアイシャドーの近くに変えよう」といった改善策を考えられるようになります。Genometricsを活用すれば、考え出せる施策が格段に増えると思います。