購買データ×プロファイリングデータの分析で浮かび上がった意外な事実
編:SCI-personalの特徴として、購買データとプロファイリングデータを組み合わせて分析できる点があります。どのような活用事例が出てきているのでしょうか。
片桐:お菓子カテゴリXについてプライベートブランド(以下PB)中心に購買する消費者を、SCI-personalで分析したケースがあります。PB商品を買う人=低価格志向と考える人が多いでしょうが、実は全くそうではありませんでした。分析を進めると、PB中心の消費者は「カテゴリXの平均購入単価が全体と比較して20%ほど高い」「PBに限らず、カテゴリXの多くをスーパーでなくコンビニで買っている」ことが分かりました。そのカテゴリは、スーパーで特売品を買った方が安いため、「定価販売のコンビニでPB中心に買う人の方が、平均単価が高くなる」ということなのです。
高いお金を払ってPBを買っているとなると、その人達は、PBにどのような魅力を感じているのか?が気になりますよね。SCI-personalでは、消費者の購買履歴とあわせて価値観、ライフスタイルなどのプロフィールデータもシングルソースでデータベース化しており、さらなる深掘りをすることが簡単にできます。
分析を進めると、カテゴリXについてPB中心の消費者層は、「直感的に銘柄を選択する」、「気に入ったものをまとめ買いする」傾向が高いことが分かりました。つまり、PB商品は、買い物自体に、時間的なコストをかけず、すばやく気に入ったものを選び、“ストック”したいというショッパーニーズに応えていたわけです。さらに分析を進め、カテゴリXについてPB商品中心の消費者は、お菓子全体でもPBの構成比が非常に高いこともわかりました。PBのお菓子棚は、いろいろなカテゴリの商品がコンパクトに一同に介していますからね、まさに売り場として、「手早く気に入ったものを選んでまとめて買う」ニーズに応えているわけです。
PBの価値というと、コストメリットと決めつけがちですので、これはクライアントにとっても非常に大きな発見でした。
元田:商品を「本当に買った」人のデータを使って、価値観、ライフスタイルなどを分析できるのがうれしいところですよね。アンケート調査ではどうしても、「買ってない/他社メーカーの製品を買ったけれど、勘違いで『買った』と選んだ」人が入ってきてしまいますからね。さきほどのPB分析の話でいうと「PB中心で購買している人」を意識からではなく、購買履歴から正確に定義できているからこそ「発見」につながっているのではないでしょうか。人間、自分自身の日常の行動を全て憶えているわけではないので、記憶に依存せず、購買の履歴から定義できるというのはアンケートにはない特長ですよね。
バーコードレベルのデータを持つことで、商品分析をより細かく
編:商品バーコードレベルでデータを持っている点について、事業会社としてはどのようなメリットがあると感じているのでしょうか。
元田:当社は総合酒類メーカーとして、ビール、焼酎、洋酒、チューハイなどを扱っています。バーコードでデータを追えると「どの製品が買われたか」だけでなく、「売れた容器は、びんか、缶か、ペットボトルか」「サイズは何mlのものか」と詳細まで落とし込んで調べられるので、その点がありがたいですね。同じビールであっても、お買い求めいただけたのがスーパードライの350ml缶か、500ml缶かで違いがあります。例えば時系列で調べていくことで、「350ml缶中心だったのが、買い始めて半年後から500ml缶中心になった」といったことが分かるかもしれません。こういった発見は、ある時点しか切り取れないアンケート調査からは得られないでしょう。
実際、サイズに注目したことで、ビジネスに生かせそうな生活者の動向を発見できたこともあります。例えば、当社の販売しているバーボン「アーリータイムズ イエローラベル」には、200mlから1000mlまでの幅広いサイズがあります。「バーボン=円熟味を増した大人のお酒」というイメージがありますが、意外とコンビニで200mlや350mlの小さなサイズが売れていることに気付きました。分析してみると、全体に比べて若者が買っている割合が高かったんです。一方、500ml以上のサイズでは、40~50代の購入者層が好んで買っている。若者にもバーボンを売り込んでいくためには、小さなサイズの製品を前面に出していくべきだと分かりましたね。