実店舗では「販売・ 接客力のレバレッジ」がトレンドに
一方、実店舗側も攻勢を強めるEC陣に対抗するべく、販売・接客力を売りとした試みを続けています。
「エリアに入ったらオススメを提供」「来店されたお客様のカルテを表示して接客」 などなど、この数年で数多の未来型接客コンセプトが提起されています。しかし残念ながら、私が知る限り、ほとんどのコンセプトは技術や商流、顧客ニーズとの不整合などの課題を抱えて足踏み状態にあります。
そんな中、いち早く成功の糸口を掴みつつあるのがアパレル大手Urban Research(UR)です。UR社では、販売員のコーディネート写真をアップロードし、独自アプリ、ブログ、FacebookやWEAR等のチャネルに掲載する仕組みを2013年5月から提供。利用者は性別やキーワード検索などで自分の好みにあったコーディネートを探して、そのままECサイトや店舗で購入できる仕組みです。

この説明だけだと一見、他のECサイトと変わらないように感じられてしまいますが、UR社が画期的なのは、
①コンテンツ(コーディネート)を多チャネルに配信できる
②コンテンツ起因の売上をトラッキングできる
という仕組みを提供している点です。この2つによって、販売員は自身の販売力の一部であるコーディネートを効率的に拡散でき、また、それによる評価を受けることができるようになります。
過去、販売員の販売・接客力は「勤務時間 ÷ 顧客あたりの接客時間 × 顧客単価」を最大値としており、どんなに優秀な販売員であっても売上に限界が存在していました。ところがUR社が提供するネットを活かした仕組みではその壁が存在せず、販売・接客力(コンテンツ力)があればあるほど売上を得ることができます。

UR社ではこの仕組を提供した結果、月にアプリ経由で200 万~300 万円の売り上げに貢献する店員が生まれる(※1)など、過去実店舗では不可能だった販売・接客力を実現することに成功しています。
私はこれを「販売・接客力のレバレッジ」と呼び、オムニチャネル領域における注目トレンドのひとつと位置づけています。オムニチャネル領域において、常に先駆的な役割を担っているPARCOでも同様の動きが始まりつつあります。
※1 『日経デジタルマーケティング』2014年2月号より。