モノは見せ方ひとつで売れる
ちょっと、ここでECサイトに限った話をしてみます。
筆者が関わった事例のひとつに、某大手企業のECサイトの構築・運営があります。このサイト、それなりの投資をして、オリジナル商品も開発し、電波媒体まで使って宣伝広告までしたのですが、売上は期待した値ほどではありませんでした。
その理由を関係者がさまざまな調査をしたのですが、その過程でちょっと驚くべき事実が浮かび上がったのです。それは、商材カテゴリーが結構ダブっているある地方のECサイトが、この大手企業ECサイトの数分の一の予算規模的でしかないにもかかわらず、何倍もの売上げがあったのです。その秘密は何なのか? 私たちは徹底的に調べました。
その結果、行き着いた結論としては…何のことはない、前ページの5つのチェックポイントの実現でしかなかったのです。
この地方のECサイトは、とにかく商品の見せ方・解説の仕方がうまい。視点が常に顧客側にあって、さらりと生活提案などを挟み込んでいたりするわけです。例えば、あるルームランプを売るときは、「どこそこのブランドで、こんな良い材料を使っていて、価格もこんなに安いんです」だけではなく、「寝室のこんな場所において、こんな使い方をしたら、こんなムードが楽しめますね」のようなコメントを何気無くすり込むのです。当然、掲示する写真も商品の切り抜きだけではなく、生活提案に即したイメージをメインに据えています。
こういった手法は、売る側の商品センスにも大きく左右されるので、どんな場合でも成功するとは限りません。ただ、その情報を受け取る側にすれば、自分のリアルな生活との接点を示してくれることによって、自分が「実際に使うシチュエーション」を想像できるメリットがあることは確かでしょう。また、自分の想像していたのと、まったく異なる価値観に気付くかもしれません。
もちろん、提案型にすればすべてが解決するわけではありません。しかし、ともすればインターネットのECサイトは無人販売スタンドのようなイメージで捉えられているケースが多い…つまり、十分な商品情報を与えれば、商品は「勝手に売れる」と考えられがちなのです。
売る側の論理とすれば、「そこを訪問するユーザーは、そのサイトを選んだ時点ですでに何らかの方向性や動機を持っているのだから、彼らのニーズに沿った商品を提供すれば必ず売れるはずだ」ということになります。
もうおわかりですよね。この論理、間違ってはいないですし、事実それで成功した例もあります。ただし、それはラインアップとして過不足ないバリエーションを提供でき、かつそれがユーザーも自分の欲しいものが明確にイメージできるジャンルのもの(スペックで商品が判断可能なPCなど)であると思うのです。
とはいえ、売りたいモノがいつもその条件に添っているわけではありませんし、ユーザーが実際に「買う」「買わない」を決めるボーダーラインは、実に微妙なものです。では、現実的に売上を立てるために私たちはどう対処すべきかを、次のページでは述べてみます。