ZOZOTOWNの新規会員獲得戦略
どこの企業にとっても重要な課題である「新規顧客の獲得」。多くの企業が、新規顧客獲得の効率と拡大のバランスに悩んでおり、その解決策のヒントとして、ZOZOTOWNの新規会員獲得の歴史が提示された。
スタートトゥデイは1998年設立。12期連続で増収増益。ZOZOTOWNは今年でちょうど10周年目を迎えた。
拡大期:2004~2010年
2004~2010年は拡大期。まだ認知度も低く、F1M1層に対する認知度は当時は20~30%程度だったという。
「このような時期においては、我々が扱っている商品やサービスに価値を感じてもらえるターゲットのお客さまや競合環境を意識しながら、リスティングやディスプレイといったWEB広告を組み合わせて施策を行っていました。2009年からテレビCMを行うことで、認知度は90%にまで引き上げることができました」(清水氏)
拡大期初期に最も重要視していたことは「年間の広告予算をいかに最適配分するか」だった。CPAやCPOを重視する考え方だったが、2009年以降はテレビCMにより認知度が上がったこともあり、CPAがあまり良くなくなり、新規会員の獲得に伸び悩んだという。
「認知度が上がって、浸透した結果、なかなか新しいお客さまが取れなくなったんですね。そこで次に我々が取り組んだのは、原点に立ち返ること。結局、お客さまにとって差別化された提供価値は何なのか?ZOZOTOWNにしかできないことは何か、を徹底的に考えました。すると、洋服を買うきっかけや、洋服をお届けした時のお客さまの気持ちなど、ぜんぜん自分たちがお客さまのことをわかっていないことに気付きました」(清水氏)
変革期:2011年以降
そこで同社は、顧客を理解するために「サービスデザイン」というアプローチに取り組んだ。場合によっては、実際に部屋を訪れ、クローゼットの中を見せてもらい、話を聞き出したりもしたという。
さらに、KPIを新規会員獲得数ではなく、新規購入者数にシフトした。つまり、離反する顧客数以上に新規購入者数を獲得しなければ、アクティブ会員数は増えない。よって、離反顧客数以上の新規購入者数を継続的に獲得していくことで、結果的にアクティブ会員数が右肩上がり増え、売上が増加するのだ。
「売上というKPIしか見ていないとどうなるか。だいたい離反はライトユーザーから始まるので、売上にはあまりインパクトはありません。なので、売上だけを見ていると、その状況に気付かないことが多く、いざ売上が落ちてヘビーユーザーが離反し始めると、その時にはすでに手遅れになっているのです。だからこそ弊社では、新規購入者数が離反者数よりも多くとれているのか、アクティブ会員数が右肩上がりで伸びているか、といったことを重要なKPIとして常に見ています」(清水氏)
「決して広告を否定しているわけではない」
ここで武藤氏は、ZOZOTOWNが今は広告をほとんど実施していないことに対して言及した。それに対して「そうですね。でもそれは、決して広告を否定しているわけではありません」と清水氏は語る。
「最近取り組んでいる『WEAR』などは、結構なGRPでテレビCMを実施しました。新規サービスの立ち上げや認知を初動で取るためのテレビCMはやっていますが、いわゆるレギュラーで行うテレビCMやリスティングはゼロですね」(清水氏)
「広告を止めた直後は、UU数は10%程度落ちましが、売上は落ちませんでした。今も昨対でいうと、新規会員及び新規購入者数は120%以上で獲得できています。そのためには、SEOだけでなく、欠品対策にも力を入れています。ZOZOTOWNは商品数が多いので、お客さまが欲しいと思った時にきちんと商品があるかということ(機会ロスをなくすこと)がすごく大事です。
新規会員を獲得し続けることは絶対に大事です。その目的のために、広告が必要であればやったほうがいいです。そして広告ではない手法があるのであれば、そこにもチャンレンジすべきでしょう」(清水氏)
