SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2025 Retail

MarkeZine Day 2014 Autumn

ネットと店舗の融合、肝はデータ連携にあり!東急ハンズが進めるオムニチャネル戦略

オムニチャネルを支える「発想の転換」

 コレカモをきっかけの一つとして見出した「リアル店舗とネットをシームレスにする」を目標に、東急ハンズがネットストアの改変に着手し始めたのは2010年のこと。その根幹には「店舗があるからこそ、できること」という発想の切り替えがあったという。この転換によって、3~4年の間に取り組んできたオムニチャネルの本丸として、ネットストアが機能しているという。

 コレカモで実現した「リアル店舗の在庫状況をネットで知らせる」という施策により、顧客の購買のきっかけを誘発することができた。そしてそれをネットストア上でさらに拡大させることで、ネットストアを店舗の“後方支援部隊”と位置付けた。例えばネットストアでは、欲しい商品を検索すると、各店舗での在庫状況やスペック、商品写真が提示される。もちろんネットストアで購入することもできるし、ほかの買い物がてら店舗に行って購入することも可能だ。

 コレカモが「リコメンド」であるのに対し、ネットストアは「検索」での情報提供となる。これらによって、ユーザーが自分で適切な情報にたどり着けるハードルはより低くなったと言える。さらに、対象となる商品データベースも10万点にまで拡充させたことで、利便性は更に向上した。

 また、ユニークな点として「今コレ売れました!」という機能をネットストアトップページで展開している。これは「未知の商品との出会い」を演出する機能で、東急ハンズ全店舗のPOSデータとリアルタイム連携し、コレカモのキャラクターが「今、店舗で売れた商品」を画像付きで提示するもの。この機能を実現できるのは、POSデータ以降の業務データをすべて自社で管理しているためだ。「POSデータをネットストアでリアルタイム表示する必要はありませんが、オムニチャネル化に当たり、すべてのデータを自社管理することは重要なポイントです」と緒方氏は語る。

 さらにもう1つ、店舗を持つ強みを活かした取り組みがある。ネットストアに掲載されている品物を店舗で受け取れる「店舗受け取りサービス」だ。同社は、通常の東急ハンズ店舗より品数を絞った、提案型ライフスタイルショップ「ハンズビー」も展開している。同店舗でもネットストアに掲載されている商品を受け取ることができる。顧客の来店動機を促す効果もあり、また店舗にとっては「扱っていない商品でも提供できる」という付加価値を提案するメリットがある。こうして、店舗とネットのシームレス化は加速していった。

オムニチャネルを実現するための、3つの改革

 オムニチャネル実現に向け、ネットストア改変のポイントとなったのは「店舗との連携強化」「マルチチャネル化推進」「内製化による効率化アップ」の3つだという。

 店舗との連携強化という意味では、先に説明したとおり、商品情報の提供や受け取りについてシームレスな連携を実現したほか、会員情報やポイントの共有を進めた。また、マルチチャネル化とは、東急ハンズのネットストアだけではなく、楽天やAmazon、ヤフーなどにECチャネルを多展開することだ。開始前は「東急ハンズの会員顧客が流出するのでは」という危惧もあった。しかし、実際に運用してみると客層が異なるためか、流出もほとんどなかったという。そのため、ECチャネルに関しては今後も積極的に出店していく方針だそうだ。

 店舗との連携強化や、マルチチャネル展開がスピーディーに実現できたのは、3番目に挙げた内製化推進策によるところが大きい。内製化とは、冒頭でも説明した「データ整備」「物流整備」の2つだ。まずデータ整備については、POSデータ移行の処理をすべて自社開発システムで行うことにした。データの統合はもちろん、商品情報の管理画面も自社開発し、バイヤーが入力した情報を少し加工すればネットストアのデータとして活用する仕組みを整えた。また物流拠点として、外部に委託していた物流倉庫を廃止し、東急ハンズの店舗を「倉庫」として扱う仕組みを整えた。

ハンズの次なる一手とは?

 こうしてオムニチャネル化を進めている中、毎年行われている年1回の同社のセール「ハンズメッセ」が今年も8月末に開催された。効果を見てみると、店舗/ネットの両方で購入したオムニチャネル型顧客は、店舗もしくはネットだけの顧客と比べ、購買単価が120~150%ほど高いという。とはいえ、「ネットと店舗の相互利用率は、まだまだ成長の余地があります」と緒方氏。今後さらなる施策を展開していくという。

 その1つが、スマートフォンアプリの開発だ。スマートフォンアプリで東急ハンズの会員として登録し、買い物をすると、その情報やポイントは店舗、Webでも共有される。気になる商品をお気に入りとして登録することもでき、そのままスマートフォン経由で購入したり、また店舗での取り置きを頼んだりすることも可能だ。リリースは11月を予定しており、今後のオムニチャネル戦略の根幹を担うことが期待されている。

 緒方氏は最後に「顧客が普段行っている行動に追い付くことが、オムニチャネルのポイントです。あくまでスタートラインにあるということを忘れないで下さい」と述べ、講演を締めくくった。

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
関連リンク
MarkeZine Day 2014 Autumn連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2014/10/24 11:00 https://markezine.jp/article/detail/21080

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング