年間売上1億ドル超!米ファッションECサイト「NastyGal」の成功の裏側
米国のファッションECサイト「NastyGal」の創業者であり、同社CEOであるSofia Amoruso氏が登壇し、自身の生い立ちから、ECサイトを立ち上げるまで、そして顧客とエンゲージメントを続け、成功し続けるための秘訣を語った。

NastyGalは、年間1億ドル超の売り上げを誇り、米国で勢いのあるファッションECサイトの一つとして注目をあつめているサイトである。NastyGalのInstagramには、10月時点で143万フォロワー、Facebookファンページには115万「いいね!」、Twitterには19万フォロワーがいる。またビジネスが軌道に乗るまでの軌跡を書いた最近の著書『#GIRLBOSS』は、11週連続でニューヨークタイムスのベストセラーリストにランクイン(最高位2位)しているという。
もともとは、ビンテージ服をeBayで売ることからスタートし、MySpaceにて自身のeBay上のショップをプロモーションするためにファンをどんどんと増やしていったという。また、ショップの中で、写真の撮り方、コピーのつけ方ひとつで、売り上げがまったく変わっていくことを体験。その後、ファンを維持するためのコミュニティーとして SNSのFacebookの活用へシフトをしていく。カスタマーを楽しませる、カスタマーのストーリーに合ったメッセージングと商品を提供していく、という手法はこのころに培われたものであるということだ。

Sofia Amoruso氏によると、NastyGalはSNSを巧みに利用しながら顧客とのコミュニケーションを行い、顧客のフィーリングを作り出し、NastyGalに掲載されている服を着るイメージを顧客に「事前に消化」してもらうことによって成功しているそうだ。今では、Facebookのみならず、「Instagram」「Twitter」「Tumblr」などのSNSも巧みに活用し顧客とのコミュニケーションを深めている。
日本のECサイトが見習うべきポイント
実際にNastyGalのサイトを観察してみると、日本のファッションECサイトではまだあまり見られないいくつかの面白い点を発見できた。まず、トップページからドレスのカテゴリで洋服を検索しようとすると、右手にライブチャット機能を使用できるアイコンが出てくる。ここでは、「Hi there! How can we help?(ハーイ、こんにちは!何かお困りですか?)」と挨拶文が出てきて「商品について質問したい」、「配送のステータスが知りたい」、という質問以外にも、「スタイリングのアドバイスが欲しい」という質問もできる選択肢が出てくる。
また、それぞれの洋服をクリックすると、洋服の説明文や名前がとてもユニークなことがわかる。各洋服ごとに、これを着てどんなところに遊びに行こうか、そして、何色のリップをつけたらいいのか、どんなブーツとあわせるのが良いのかについてもミニ・ストーリーが記載されている。NastyGalのサイト上には外部からの広告表示などを一切排除しており、写真の見せ方、商品説明文章やモデルの表情などを含むクリエイティブなど、すべてにおいて独自の世界観を作り上げている。
ファッションECサイトでありながら、音楽、アート、旅行、食事などについて綴ったNastyGalに登場するモデルらによるブログもあるのも面白い。こういった一連のクリエイティブを通して、売り手からの「私たちが紹介している洋服を着て、楽しい日々を送って欲しい。あなたもこのストーリーを作り出す一員」というメッセージが送られているかのように感じる。
多くのファンを持つNastyGalブランドそのものもが、「カルト・ブランド」と呼ばれることもあるそうだが、Amoruso氏は、「ブランドそのものが『カルト・ブランド』を作るのではなく、カスタマーによるコミュニティーがそれを作り上げている」と断言する。スペシャルで記憶に残るバリューをカスタマーに提供し続けることによって、カスタマーの口コミが自然に広がるのだ。
現代の消費者は「I want what I want when I want(私が欲しいものは私が欲しいタイミングで手に入れたい)」と考えており、「その中で送料無料キャンペーンなどを行っている巨大ECサイトと戦っていくためには顧客がそのサイトでショッピングをすることによってエクスクルージブ(特別な)体験をしていると感じなくてはいけない」とAmoruso氏は続ける。
Amoruso氏の講演では、ストーリー・テリングにおいてもっとも重要な売られている商品の背景(コンテキスト)を消費者に説明し、カスタマーのフィーリングを作り出しカスタマーと共感することが実際に非常に効果を出しているということが強調された。