次に来るのはオムニチャネル対応の波
その次にオムニチャネル戦略を推進する小売業などでオンラインとオフラインにまたがるクロスチャネル・コミュニケーションを実現するためにCCCMの導入が検討されることになると思います。
オムニチャネル化を進めるためにはECと実店舗で顧客データベースを統合し、オンラインとオフラインの境目を意識させないシームレスなコミュニケーションが必要です。特にモバイルデバイスの活用が鍵になります。
スマホの位置情報を利用した来店促進や店頭プロモーションは既に色々な形で行われていますが、今後ますますテクノロジーが発達して盛んになるでしょう。
先日調査会社のGartnerが発表した「Gartner Predicts 2015」で発表された10の予測の中で10番目は「2020年までにターゲットメッセージングと屋内測位システム(IPS)を組み合わせて活用する小売企業の売り上げは5%増加する」というものでした。
もともとECサイトなどを通じて、オンラインで繋がっている利用者に実店舗にも足を運んでもらい、実店舗の利用者にはWebサイトも活用してもらう、そんなO2O施策を実行するにもモバイルデバイスが中心になります。
現実的なチャネルは今ならメールとアプリへのプッシュ通知(モバイルプッシュと呼びます)、そしてLINEでしょう。LINEの場合は「ビジネスコネクト」の機能を使ってCRMデータと連携した運用を検討する必要があります。
クロスチャネル管理機能を持つCCCMはまさにこのような複数のチャネルを組み合わせて統一したコミュニケーションを実行するために設計されています。オムニチャネルに対応するためには欠かせない機能です。
モバイルコミュニケーションの鍵はrelevancy
モバイルプッシュのパーミッション取得率はEメールよりもずっと低いのが普通です。LINEも今後企業からのメッセージが増えればブロック率が上がっていくでしょう。
非常にパーソナルなデバイスであるモバイルでは自分に関係ない情報がプッシュされてきて「ウザい」と思われたらアウトです。「ジオフェンシング」で位置情報に基づいてプッシュを配信することもできますが、店舗の近くを通るだけで毎回全員共通のクーポンが送信されてくるようなアプリなんて逆に迷惑に感じる人も少なくないでしょう。
本当に役に立つ、喜ばれる情報やオファーをタイミングよく最適な顧客だけに届ける必要があります。これからのモバイルを中心としたマーケティングコミュニケーションでは、不要な情報や関係ない情報はできるだけ送らないという「引き算のターゲティング」がとても重要です。
米国のマーケティング業界でよく使われるrelevancy(形容詞だとrelevant)という言葉があります。直訳すると「関係性」「関連性」となりますが、マーケティング用語としてぴったりくる日本語がありません。「その人にとって意味がある」「興味・関心がある」「好みや嗜好に合う」「必要としている」といったニュアンスになると思います。「自分ごと」という言葉も近い意味で使われています。
広告をはじめあらゆるマーケティングコミュニケーションにおけるターゲティングやコンテンツのパーソナライズ、レコメンデーションなどは全て企業のメッセージが消費者にとってrelevantであるための努力だといえるでしょう。
モバイルデバイスを中心にしたオムニチャネル対応のコミュニケーションではrelevancyの重要性が飛躍的に高まります。
そのために顧客に関するあらゆるデータを使って一人一人の顧客にとって意味のあるコミュニケーションシナリオを作り、アクセスログや位置情報などのリアルタイムデータでタイミングを図ってOne-to-Oneで実行しなければなりません。
例えばこんなシナリオが想定されます。
- 以前は常連客だったが最近リアル店舗でもECサイトでも買い物をしていない、そんな顧客がお店の近くに来たときに、過去の購買履歴やWebアクセス履歴からその人が興味を持ちそうな商品の特別クーポンをモバイルプッシュとLINEで送る。
- 店頭で購入した商品のメンテナンス情報や関連するおすすめ商品のリストを購入翌日にメールとモバイルプッシュで送る。
CCCMはもともとこのようなクロスチャネルでのOne-to-Oneコミュニケーションを実現するためのツールです。オムニチャネル戦略の推進に伴ってCCCMの導入を検討する企業が増えることになるでしょう。