誰と、何を共創するか
ブランドの使命から共創マーケティングの目的を決めた上で、次に「誰と、何を共創するのか」を定義します。
何を共創するか
次の図のように自社のマーケティング・プロセス全体を見つめ直し、どのプロセスに共創の可能性があるのかを洗い出します。共創マーケティングの目的を実現するために、生活者が効果的に関われる場所はどこかを考えましょう。

その際、商品を消費する瞬間も検討の対象に含めます。これまでのマーケティング・プロセスでは商品を売るまでが重視され、売った後にどのように使われるのかはあまり重視されていなかったかもしれません。しかし、サービス・ドミナント・ロジックの考え方で語られるように、生活者はモノを消費しているのではなく、消費する楽しみに価値を感じています。
例えば、トヨタには「86 SOCITY」という、スポーツカー「86(ハチロク)」のコミュニティがあります。ここでは、車の乗り方の1つである、峠を攻めるというシーンをより楽しめるように、「峠」ガイドをコミュニティ参加者と共創しています。

また、前回紹介した「みなさまのお墨付き」で考えると、「品質の高い商品を安く」というプライベートブランドの使命を踏まえて、商品の品質のチェックを生活者に委ね、店頭販促でそれを伝えるという共創モデルを作り上げています。
なお注意したいのは、これまでの強みを失ってしまうパターンもあることです。例えば、ブランドの特徴的なデザインがコアコンピタンスになっている商品の場合、デザインを生活者と共創するのは、危険が伴います。
誰と取り組むか
共創のパートナーを考える際には、ターゲットを絞ることが大切です。同じスポーツを楽しんでいる人であっても、志向は様々です。スポーツを競技として捉え、勝ち負けを強く意識している人もいれば、体を動かしたり仲間とのコミュニケーションを重視している人もいます。このような場合、同じスポーツのコミュニティでもコミュニケーションは異なります。
さらに、「誰と取り組むか」を変えることで別の共創モデルを創ることも可能です。例えば、P&Gは「Connect & Develop」というサイトで自社が求めているイノベーション・ニーズを公開し、解決策を持っている専門家や企業の提案を募集しています。このように、専門家やデザイナー、技術者と共創することで、彼らの専門性を商品開発やデザインに活かすという共創モデルもあります。

ミッションステートメントを作成する
次に自社と参加者によって共創することの意義を定義します。そのために、これまで明確にしてきた「ブランドの使命」と、「誰と何を共創するのか」を融合させて、参加者にとってのコミュニティの価値を考えます。これは、共創コミュニティの紹介ページなどに掲載した場合、「参加者がコミュニティに参加・協力しよう」と思ってもらえるものである必要があります。
例えば、無印良品の「くらしの良品計画所」には、「私たちはよりいっそうの良いものづくりをめざして」から始まる言葉が掲載されています。ここに表現されているように、生活者との相互交流を大切にして、その中から共に商品とライフスタイルを作っていくというコミュニティのミッションを明示しています。
