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予約率、50%台から90%超へ! LCC市場で抜きんでたバニラエアのマーケティング施策

 「マーケティングイノベーション室」の設立、広告ソリューションのリニューアルと、近年まさに“爆速”でドラスティックな変革を続けているYahoo! JAPANによる本連載。今回は、2013年11月に社名を変更して再出発したバニラエアが取り組んだ、認知度と売上の向上を両立した事例を紹介。同社の近藤寛之氏をゲストに、Yahoo!プレミアムDSPの活用を取材した。

認知度向上と売上向上を両立させるには?

友澤:今回は、ブランドの認知度を上げつつ、売上も確保した事例をご紹介したいと思います。2013年11月に社名変更により誕生したLCC(ローコストキャリア)、バニラエアさんのプロモーションを2014年の春から夏にかけてお手伝いしました。

 LCCは航空業界の中でもやや特殊な事業環境にあると思いますが、今回のケースは、レッドオーシャンかつコモディティー化している市場の広告主には、十分応用いただけると思います。

MarkeZine編集部(以下MZ):市場が成熟していて、競合が多い環境だと、価格競争になってきますよね。まずはLCCの事業環境からうかがいたいのですが、そういう環境ということですか?

バニラ・エア株式会社 営業部 部長 近藤寛之氏(写真左)ヤフー株式会社 マーケティングソリューションカンパニー マーケティングイノベーション室 室長 友澤大輔氏(写真右)
バニラ・エア株式会社 営業部 部長 近藤寛之氏(写真左)
ヤフー株式会社 マーケティングソリューションカンパニー 
マーケティングイノベーション室 室長 友澤大輔氏(写真右)

近藤:そうですね。とりわけ当社は、前身の経営母体が変更となり社名を変更して再出発したため、認知度がまだまだ低い。でも、LCCのビジネスモデルはオンライン販売が基本なので、知られていないことがそのまま売上に影響を与えます。

 2013年の年末から運航を開始したものの、当然ながら年明けから春ごろまでの予約率はかなり厳しいものでした。加えて、われわれのようなビジネス以外の顧客をターゲットとする航空チケットですと、通常利用する2~3カ月前に購入されるので、プロモーションの成果が表れるのに2~3カ月かかります。認知度を上げることは大きな課題でしたが、同時に早い時期に売上の見込みを立てる必要にも迫られていました。

50%台で低迷していた予約率が90%超へ

MZ:認知度を上げるにはブランディング系施策、一方で売上を上げるには獲得系施策と、一見すると相反する課題のように見受けられます。この双方を実現されたのですか?

近藤:そうなんです。実際、相当な無理難題だったと思いますが、4月から7月にわたって施策を行った結果、8月のお盆時期の予約率が国際線で91.7%、国内線で92.9%と、各社の中で最も高い数値を記録しました。春ごろは50~60%で推移していたので、驚くべき数値です。

友澤:代表的な獲得系施策としてはリターゲティング広告がありますが、それだと認知は増えません。そこで今回は、獲得系だけでなく、肥沃な土地を見つけて種まき・水やりをするところから実践しようと考えました。広大な原っぱに種をまくのは非効率なので、まずはさまざまな調査をして、どこに種をまけばいいのか、つまり「どういう人が優良顧客層なのか」を探るところから始めました。

MZ:より可能性の高いターゲット層に、種まき、つまり広告配信をしようと。

友澤:そういうことです。レッドオーシャンの中で、予算を最大限うまく使って認知を獲得して差別化を図るためには、やみくもに認知拡大を目指すのではなく、より顧客になりそうな人に絞って広告を配信したほうがいいですよね。そこで、使えるデータをフル活用して、20代女性などよくある属性ではない「優良顧客層になりやすい人の条件」を探ったのです。それを今回のKPIとしました。

可能性の高いユーザー層へアプローチする2段階の施策

MZ:具体的に、どのようにプランニングされたのでしょうか?

友澤:目的から考えて、今回はStep.1として優良顧客層を定義し、Step.2としてその指標を最適化するようにYahoo!プレミアムDSPで広告を運用する、という2段階でのプランニングをしました。施策をひとことで言うと「Yahoo!プレミアムDSPの新しい使い方」なのですが、DSPありきというよりは、あくまで目的に応じた最適策を導き出した結果、このような形になりました。

MZ:では、Step.1とStep.2での施策内容をそれぞれ詳しく教えていただけますか。

友澤:Step.1は、2014年4月から5月にかけて実施しました。ここでのゴールは、優良なターゲット顧客層を発見し、KPIとして活かすために数値化して表すことです。数値化できないとKPIにならず、自動化もできないので、「バニラエアの潜在顧客層=数値Aが高いユーザー」と定義する必要がありました。方法としては、マクロミルのパネル調査によるデータと、Yahoo! JAPANのデータ、そしてバニラエアさんの蓄積する顧客データの3種類をクロス分析しています。このデバイス・ブラウザー・チャネルを横断したデータ分析により、これまでより確度の高いユーザー層に広告を配信できるようになりました。パネル調査は、最終的にどれだけブランド認知度や利用意向が高まったのかを確認するために実施しています。

友澤:Step.1は、2014年4月から5月にかけて実施しました。ここでのゴールは、優良なターゲット顧客層を発見し、KPIとして活かすために数値化して表すことです。数値化できないとKPIにならず、自動化もできないので、「バニラエアの潜在顧客層=数値Aが高いユーザー」と定義する必要がありました。

 方法としては、マクロミルのパネル調査によるデータと、Yahoo! JAPANのデータ、そしてバニラエアさんのアクセスログの3種類をクロス分析しています。このデバイス・ブラウザー・チャネルを横断したデータ分析により、これまでより確度の高いユーザー層に広告を配信できるようになりました。パネル調査は、最終的にどれだけブランド認知度や利用意向が高まったのかを確認するために実施しています。

 Step.1においては、4月と5月に2回パネル調査を行っています。その間にYahoo! JAPANのブランドパネルなどでバナー広告を配信し、同時にバニラエアのサイトにはタグを埋め込んでおいて、ブランドパネルの接触を機にバニラエアのサイトを訪れたユーザーがその後にどのような行動をとったか、すべて計測しました。

バニラエアの潜在顧客層を見つける「PV/UU」という指標

MZ:4月と5月のパネル調査を通して、実際に利用意向などが高まったユーザーを検出し、その人たちがバニラエアのサイトでどういう行動をとっていたかが分かるということですね。

友澤:そうですね。サイト上での行動データを、Qubitalデータサイエンス(※Yahoo! JAPANとブレインパッドによるデータ分析専門の合弁会社、以下キュービタル)のスタッフで分析し、どういうユーザーがバニラエアにとっての潜在顧客層なのかを導き出しました。

 実際にその指標が何だったかというと、サイトを訪れて直帰しなかった人、つまりサイト内の回遊率が高かった人です。言ってしまえば当たり前なのですが、興味関心の高いユーザーは、回遊率が高かった。これはウィンドウショッピングと同じで、店内に入ってすぐに帰る人よりも、ぐるっと見ていく人のほうが当然購入率も高くなります。以前から肌感覚では分かっていましたが、今回それが数値から見ても確かめられたわけです。

MZ:直帰率や回遊率も、いろいろな解釈があると思いますが、どう捉えたのですか?

友澤:今回は、数値で「PV/UU」としました。一人のユーザーあたりPV=1、つまり1回しかサイトを訪れなければPV/UU=1となり、直帰したことになりますよね。複数ページを回遊したユーザーは、この値が2以上となり、高いほどたくさんのページを見ていることになります。そこでStep.2では、これをKPIとして、PV/UUを高める広告運用を実践しました。

DSPによる自動最適化と人手による分析で、CTR×CVRが約4倍に最適化

MZ:いわゆる属性でのターゲティングではなく、ユーザーの行動から潜在顧客層の条件を導き出したということですね。

友澤:そうですね。Step.2はそういうわけで、バニラエアさん独自かつこのタイミングで一番フィットするKPIに基づいて、6月から7月にかけてYahoo!プレミアムDSPで広告を配信しました。

 実際にPV/UUが高かった人へ配信するのがリターゲティングになりますが、今回はその割合は10%以下です。厳密にはリターゲティングではなく、実際の配信データとPV/UUという指標をもとに、DSPの機械学習でこの指標が高くなりそうなユーザー層へ配信できるようにしたのです。

 具体的には、6月前半の1週間を機械学習の期間とし、後半から自動最適化と前述のキュービタルのデータサイエンティストによる分析の両輪でチューニングしていきました。回遊したかどうかをコンバージョンとして、CTR×CVRを追ったところ、約1カ月で4倍にまで最適化することができました。ちなみにキュービタルにおける分析結果より、25歳以下と65歳以上を除いたり、Yahoo! JAPANの行動ターゲティング広告の旅行セグメントをかけ合わせたりといった調整を行いました。

MZ:なるほど。最終的なブランド認知度などのリフトの結果は、いかがでしたか?

友澤:当然といえばそうかもしれませんが、広告非接触者や、PV/UU=1の人よりも、2や3、また4の人のほうが認知率や興味関心度、好意度、検索意向度がすべて高くなりました。

セッションの新規率も10%以上向上、DSPの新たな使い方を確立

MZ:一連の施策の結果を、近藤さんはどのようにご覧になりましたか?

近藤:前身の時代から、当社では「20-30代女性」や「ファミリー層」といった属性でのターゲティングを主にしてきたので、実は「PV/UUが高いユーザーが潜在顧客層」と言われても、最初はピンときませんでした。でも、実際に運用を始めると、目に見える効果が表れて驚いています。
友澤:属性でのターゲティングももちろん有効ですが、結果から考えると誰に購入していただいてもいいわけなので。一般的に、KPIとセグメントはずれる傾向があるので、あまりセグメントだけに縛られないのもポイントかなと思います。近藤:また、伸びたセッションの内訳をみると、新規率が高かったことが当社としては手応えがありました。以前は30%前半だった新規率が40%台中盤と10%以上リフトしたので、今回の施策を継続すればさらに広がるかもしれないという期待があります。

近藤:前身の時代から、当社では「20-30代女性」や「ファミリー層」といった属性でのターゲティングを主にしてきたので、実は「PV/UUが高いユーザーが潜在顧客層」と言われても、最初はピンときませんでした。でも、実際に運用を始めると、目に見える効果が表れて驚いています。

友澤:属性でのターゲティングももちろん有効ですが、結果から考えると誰に購入していただいてもいいわけなので。一般的に、KPIとセグメントはずれる傾向があるので、あまりセグメントだけに縛られないのもポイントかなと思います。

近藤:また、伸びたセッションの内訳をみると、新規率が高かったことが当社としては手応えがありました。懸案であった新規率も10%以上リフトしたので、今回の施策を継続すればさらに広がるかもしれないという期待があります。

MZ:今回の取り組みは、Yahoo! JAPANとしてもDSPの新しい使い方へチャレンジした形になるかと思いますが、近藤さんはYahoo! JAPANとタッグを組むことをどう判断されたのですか?

近藤:われわれとしては、最初のブランドパネル配信から確度の高いユーザー層への配信、効果の把握までをコントロールする人がいて、しっかりフィードバックを得られることが大きかったですね。

友澤:今回はバニラエアさんと膝を突き合わせて、ぶれずにKPIを追求してアクションにつなげられたことが、大きな成果を得られた要因だと思います。認知度と売上を両方にインパクトを与えられたケースとして、今回の事例をぜひ横展開していきたいと考えています。

【参考】バニラ・エア株式会社 広告クリエイティブのご紹介 (アドギャラリー)

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2015/01/06 11:09 https://markezine.jp/article/detail/21358