今や、データドリブンマーケティングがスタンダード
押久保:MarkeZineでも度々取り上げていますが、昨年から今年にかけて、ITベンダーのマーケティング分野への参入が活発です。特にオラクルは、先日杉原博茂社長のインタビューで伺った通り、強みとするデータベース事業との高い親和性によって、業界でも注目を集めています。
今回は、2015年1月より「Oracle Marketing Cloud」の日本におけるポストセールスの責任者に就任された大山さんを迎えて、グローバルでの体制や、具体的な日本での戦略について伺いたいと思います。
大山氏プロフィール
外資系企業を経て2000年にベンチャー企業に創業メンバーとして参画。バリューコマース株式会社と合併後、マーケティングマネージャーを務める。2007年にオムニチュア株式会社(現アドビシステムズ株式会社)に参加、コンサルティングサービスを立ち上げる。2012年、デジタルエッセンス合同会社設立。英ExchangeWireの日本語版編集長に就任。2015年1月より現職。
押久保:まずは、現在のトレンドをどのように見ているか、教えていただけますか?
大山:デジタルがマーケティングの中核としてますます重要な役割を担っていることは、言うまでもないと思います。さらに、この認識がこれまでリアルなマーケティングをやっていた人や、BtoBのマーケターにも及んでいます。
先日、あるデジタルマーケティング関連のイベントでパネルディスカッションに参加しました。今まで業界関係のイベント参加者はB2C企業や代理店の若い方々が大半だった印象ですが、参加者へアンケートをしたところ、半分近くが事業主で、BtoB企業も少なくなく、マーケティングテクノロジーへの関心が今まで接点の少なかった層へも広がっていることを実感じました。
押久保:データドリブンマーケティングの流れが、ますます広がっているのですね。
大山:そうですね。私がオムニチュア(現アドビ)に参加していた2007年頃は丁度、マーケターや経営層が意思決定できるWebのデータを収穫しようとしていた走りでした。それまではサーバログなど、IT部門の“おまけ”のような形で得たデータでマーケティング活動を分析しようとしていた。あれから8年、データの存在意義はまったく変わりました。
「ExchangeWire」編集長時代に捉えた潮流と課題
押久保:この数年で、得られるデータの種類や量は膨大になり、また低価格で扱えるようにもなりました。大山さんは直近の2年半ほど、英国に本社を置くアドテクノロジー専門のニュースメディア「ExchangeWire」の日本語版の編集長をされていましたが、プレーヤーを離れて見えてきた潮流などはありましたか?
大山:データドリブンのマーケティングが発展し拡大した結果、これまでになかった課題も生まれています。例えば、ターゲティングの技術やRTBなどのイノベーションが生まれた一方、データ量が膨大過ぎてマーケティング担当者の作業負荷が増え、デバイスやチャネルの多様化により、同じユーザーに対するメッセージに統一性を持たせるために技術的な課題へ対応する必要性に迫られています。そして、元々日本ではデジタルマーケティング分野の人材不足が深刻な課題でしたが、この業界全体の新たな局面を理解して引っ張れる人が少ない。これは業界関係者とたびたび話題に上っていました。
もうひとつ私が関心を寄せていたのは、オラクルやアドビ、グーグルなど大手企業がマーケティングテクノロジーの会社を次々買収していたことです。アメリカのアドテク業界ではしばしば“アドテクスタック”という表現が使われていますが、データドリブンな広告・マーケティングを展開するために必要なテクノロジー群を1社が包括的に提供し、顧客の囲い込みを図るのがトレンドになっています。これら企業が狙っている差別化要因は何なのか、どこへ向かうのだろうかと。
押久保:様々なサービス・テクノロジーを揃えた上で、マーケティングをより一気通貫で完結させようということですね。大量のデータを前に作業負荷が増え、どこから手を付ければよいか分からない、という企業の大きな助けになる。
大山:仰るとおりです。このプラットフォームを提供する形でのマーケティング支援は、オラクルの方向性でもあります。