過去の買収はプラットフォーム構築を見据えたもの
押久保:マーケティングオートメーションやDMPの実践を通して蓄積したデータの保守運用を考えると、オラクルは実績が厚く信頼性もあります。杉原社長も相性の良さを強調されていました。
大山:まさしく、そこが重要なポイントです。オラクルもBlueKai(ブルーカイ)やEloqua(エロクア)といったマーケティングテクノロジーの会社を買収してきました。これらはマーケティングオートメーション、DMP等の専門分野におけるトップの実績があっただけではなく、CRM/SFAやウェブ解析のような自社データを保有するツールとの連携、3rdパーティデータ(第三者が保有するユーザ属性やマーケティングデータ)とのデータ統合といった拡張性の高いDB設計に強みを持つ企業でした。
押久保:そもそもデータベース事業がコアとしてあるから、そういう方針が取れるのだと。
大山:はい。包括的にツールを提供してもデータ管理を一元化できないのならば、あまりマーケティング効果は期待できません。データのイン・アウトが柔軟で、一元化されたデータから付加価値のあるインサイトを得ることができ、ユーザの行動に応じてパーソナライズされたコミュニケーションを複数のチャネルにまたがって自動的に実行できる。つまりあらゆる顧客接点でのコミュニケーションの効率化・最適化を可能にする、これがOracle Marketing Cloudなのです。
傍目から見ると、オラクルという企業は勢いよく買収を重ねるモンスターみたいなイメージですよね(笑)。ですが、この10年間に買収した企業ラインナップをよく見ると、セキュリティやパフォーマンス、ストレージなど、クラウドサービスのプラットフォームを強化するのにベストなソリューションを取り込んでいることがわかります。
押久保:ここ数年の活発な動きは、最終的に構築するプラットフォーム像を見据えてのことだったと。
予算51.5億ドル、強大な技術開発力が支えるバックエンド
押久保:クラウドのプラットフォームを構築するためには買収の費用だけでなく、それらを早急につなぎ込む相当の技術力と予算が必要かと思います。
大山:もちろんです。オラクルの技術開発力、それにかける予算は、実は私が参画するに至った理由の1つです。その額は年間約51.5億ドル(日本円で約6,107憶円)。主要IT企業と比較すると、売上高に占める研究開発費は13%と群を抜いています。
ご存知の通り、既存のデータベース事業では金融などのクライアントも多く、僅かなミスも許されません。そのため、バックエンドの部分は常に盤石にしていないといけない。これはあくまでも日米のベンチャー企業で働いていた私個人の経験に基づく視点ですが、ベンチャーはたいてい資金が潤沢ではなく、インフラにかけられる予算は限られています。お客様はベンチャーが提供するイノベーションからビジネスの恩恵を受ける一方、インフラ的な障害やパフォーマンスの一時的な低下をバーターとして受けてしまう状況が少なくありません。その点、Oracle Marketing Cloudはイノベーションを失わずに、インフラの強化という理想的なプロダクトの発展を続けています。
押久保:一方で事業の規模が大きくなると、ビジネスのスピードがどうしても鈍ると思うのですが、この点についてはどうお考えですか。
大山:その懸念については、スピードと成果を最大化する組織体制を整えているので解消できると思います。例えばOracle Marketing Cloudを扱うチームは、国ごとではなくグローバルでひとつのチームになっています。