注目度急上昇! インバウンドビジネスの全体像を押さえる1冊です。
2014年、最も注目を浴びたワードは「インバウンド消費」
2014年の年末に発表された日経MJヒット商品番付において、「インバウンド消費」があの「アナと雪の女王」を尻目に東の横綱に選定されました。インバウンドにはいくつか意味がありますが、観光業では「訪日外国人観光」を表します。
●横綱は「インバウンド消費」と「妖怪ウォッチ」 MJ14年ヒット商品番付
最近できた言葉なのかなと思われる方もいるかもしれませんが、本書編集担当の臼井はなんと、2010年にはすでにインバウンドビジネスに注目していたとのこと。その頃にはもちろん、この言葉を聞いたことのある人はほとんど誰もいなかったでしょう。
「将来、いまより多くの外国人観光客がやってきたとき、日本人はおどおどして受け答えできないのではないか、と危惧していました。そうならないためには、インバウンドビジネスの入門書が必要です」
そこで日本のインバウンドを熱くする「やまとごころ.jp」を運営する村山慶輔さんの講演を聞き、企画の声をかけたそうですが、そのときは形にはならなかったとのこと。それもそのはず、まだ日本国内ではインバウンドビジネスが重要だという機運がそこまで高まっていなかったからです。臼井が本格的に作るべきだと動き出したのはここ2年、そう、年間の外国人観光客が1,000万人を超えた頃です。
タイトルに「インバウンド」という言葉を入れるかどうか自体、熟考が必要だったそうです。しかし、認知度の低さへの不安は上述の記事によって一気に解消。副題は「沸騰するインバウンド市場攻略ガイド」です。
業界全体を俯瞰する入門書がなかった
観光ビジネスに関する書籍は数多くありますが、ことインバウンドビジネスになると学術的なものや個人の体験談に留まるものばかりで、業界全体を俯瞰し、体系的にまとめた書籍はありませんでした。
「類書を探してみたら、これというのがない。特に地方や外国人相手の接客なんてしたことのない人が読んで実践できる本がありませんでした。本書は絶対にビジネス書として、気軽に読んで試してもらえるような内容にしたかったんです」
そんなこだわりが最も表れているのが、本書に収録されたデータや図解の多さ。100点以上の図解のおかげで、眺めるように読み進めることができます。かといって文章を読む必要がないというわけではありませんが、図解でまず全体像を掴むと内容も頭に入ってきやすくなります。
著者の村山さんとも図について相当な応酬があったと明かしてくれましたが、ここでは詳細に立ち入らないでおきましょう!
インバウンドビジネスのその先には「国際平和」がある
現在、インバウンドビジネスのニーズは確実に高まってきています。ですが、外国人をどのように呼び込めばいいのか、観光客の出身国ごとにどんなおもてなしがふさわしいのかなど、受け入れる日本人側の対応が充分であるとは言いきれません。
そうした課題を多くの具体例とともに、体系的にまとめ、解説したのが本書です。一読すれば明日から実践できるほど分かりやすい本ですが、村山さんはインバウンドビジネスの先をしっかりと見据えていらっしゃいます。
インバウンドは「日本のファン作り」だととらえています。日本ファンを世界中に増やしていくことで、彼らが訪日し、たくさんの消費をする。その過程ではお互いをより深く知るといった相互交流も生まれてきます。それが究極的には「国際平和」につながる。インバウンドにはそんな可能性があると信じています。(あとがきより)
ビジネスだけに留まらない村山さんの情熱は、臼井の胸に強く響いたそうです。ですが、いきなり国際平和を考えるのではなく、まずはできることから少しずつ。近所のあの田んぼも、外国人観光客には魅力的に映るかもしれません。そのとき本書が役立ちます。
本書は、インバウンドビジネスに直面していて、外国人観光客に対する具体的な施策や準備を考えている方には特におすすめの1冊です。
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