リアルタイム・マーケティング・プラットフォームに進化を遂げたTealiumの躍進
有園:広告業界ではDMP(Data Management Platform)の活用が日本でもかなり進んできています。しかしながら、ひとつのベンダーのDMPを導入すると、サイト内レコメンデーションや広告配信などソリューションに展開する部分で、他のベンダーのツールとの連携が難しいことが多く、プロジェクトがうまく進まないことがあったりします。そのような状況の中で、それらの仲立ちとして機能するようなソリューションがでてきたのかなと興味を持ちました。そこできょうは、タグマネジメントにおける日本の第一人者であるTealium Japan(テリウムジャパン)の海老澤澄夫さん、そして、Tealium Japan 代表取締役のジョン・デューリーさんにお話をうかがいます。ではあらためまして、Tealiumはいつ設立した会社ですか。
デューリー:2008年にアメリカで設立しました。もともとは、タグマネジメントの会社ですが、2014年からリアルタイム・マーケティングデータ・プラットフォームに進化を遂げています。アジアでオフィスを持っているのは、シンガポールとオーストラリアのシドニー、ヨーロッパだとイギリスのロンドンやドイツ、フランスなど、あちこちにあり、グローバルでは200人以上います。
有園:8か国以上ですね。日本では2015年4月から営業開始され、何名体制ですか。
デューリー:日本法人を2014年9月に設立し、11月には赤坂にオフィスを持ちました。現在は2人ですが、ビジネスの伸びによって少なくとも5人から10人くらいの体制を構築する予定です。
有園:日本での営業戦略は?
デューリー:戦略としてはパートナーと組んでやっていこうとしています。直接の販売は積極的に行うつもりはないです。
有園:パートナーというのは代理店ですか?
デューリー:そうですね。広告代理店やマーケティング関連の会社、SIerとかがメインです。弊社はどちらかというと、アメリカでもそうですが、500くらいのお客さまがいて、ほとんどが大手です。エンタープライズ系のお客さまなので、サポートや営業の面もあり、パートナーシップを組んだほうが、特に日本のマーケットは、そのほうがいいと考えています。
有園:代理店さんやSIerの反応は良いですか?
海老澤:かなり良いです。今までのDMPが、できることと、やらなければならないことのギャップが大きすぎたため、その間を取り持つTealiumみたいなサービスを待ち望んでいたようです。
有園:今までのツールは導入負荷が高かったということですか?
海老澤:そうです。どんなに良いサービスであっても導入や運用が難しければ使われなくなります。私がTealiumを気に入ったのは、管理画面であったり、カスタマージャーニーの考え方であったり、マーケッターの方を向いているツールである点もあります。確かに、「DMPで、生ログで何でもやれば」って話はあるのですが、現実には、それができる人は少ないです。それをやって何が得られるのかというアウトプットが弱かったり、リマーケティングはできるけれど、それ以外はできなかったり。APIが用意されていないといったことがあり、現実的なところで、なかなか難しいという話はよく聞いています。そういう意味で、Tealiumはすごくいいのではないかと思っています。
統合的なデジタルマーケティング活用を阻む様々な軋轢
海老澤:デジタルマーケティング技術の発展に伴い、Webサイトだけでなく、スマホアプリの利用データ、ソーシャルでの人間関係や発言・A/Bテストによるクリエイティブへの嗜好・CRMによる顧客との接触履歴、実店舗での購買履歴データ、など収集できるデータの量と種類は増えてきましたが、複数のサービス間におけるデータの連携や、データを1箇所に集約した統合的な分析ができている企業は非常に少ないと思います。
有園:それはなぜでしょうか?
海老澤:その理由は3つあります。情報の送受信を行うAPIが用意されていないといった「技術的な理由」、社内の部門間での主導権争いといった「政治的な理由」、顧客企業の乗り換え防止のために他サービスとの連携を積極的に推進しない「ベンダー都合の理由」です。こういった悩みは多くのデジタルマーケティング担当者から聞いています。
有園:そういうシステム・政治・ベンダー由来の軋轢があり、必ずしも便利な状況ではないと。
海老澤:企業が基盤となるベンダーを選択すると、それを後から変更するのは非常に困難です。そのため、統合的なマーケティングを推進しようとする企業の多くがベンダーの選択に多大な時間をかけていますが、進化が早いデジタルマーケティング業界において速度や柔軟性の欠如は致命的な事態を招く恐れがあります。そんな不自由な状態を好まない企業はインハウスでのサイト・広告の運用や機能の自社開発に取り組んでいますが、それはそれで大変なことです。