使えるプライベートDMPにするには
幅広いマーケティング活動が実現できるプライベートDMPは、大企業を中心に様々な業種の企業から注目を集めている。しかし、多くの企業は導入ありきでプライベートDMPを構築し、せっかく高い費用をかけたのにうまく活用できていないというケースが多い。そうした「落とし穴」には陥る理由はどこにあるのか。使えるプライベートDMPにするにはどのようなことに注意すべきか。前編に続き後編では、大手企業のプライベートDMP導入事例やコンサルタントとしての現場経験を通じて、「落とし穴」にはまらないためのポイントを解説する。
大規模予算よりもマーケター目線の要件定義が重要
昨今、プライベートDMPの導入企業が増えているが、プライベートDMPというハコを導入しただけではうまく活用することができないと謳われる場面が多くなっている。また、プライベートDMPの導入には大きな費用がかかるため、一度導入したら使いづらくとも使い続けなければならないという企業が大半である。
つまり、導入までの業務設計や要件定義が非常に重要である。そして、導入期は最も「落とし穴」に陥りやすいフェーズであり、導入時に知っておくべき事を事例を通じて紹介する。
スムーズに運用できない組織構造とは
サービス業界大手のC社は、膨大な顧客データを保有しているが、それを商品設計やマーケティング戦略などに活かしきれていないという課題を持っていた。そこで、情報システム部が主導で大手システム会社へ莫大な費用をかけ、プライベートDMPを導入した。
しかし、いざ運用を開始すると、現場担当者にとって操作が難しく、業務改善や戦略立案に必要なデータを取り出すことができない。その結果、マーケティング担当者が毎日朝早く出社し、2~3時間作業して使える形のデータを抽出するという、本来ならば必要のない工数が発生している。
これではせっかくプライベートDMPを導入しても、労力とコミュニケーションコストばかりかかってしまい、本来の業務改善には寄与しないだろう。
前編でも触れたとおり、プライベートDMPは顧客とのコミュニケーション設計や戦略の一つひとつを最適化する判断材料を提供するシステムである。しかし、その判断材料(データ)を取り出すまでに多くの労力がかかるようでは、莫大な費用をかけたにも関わらず、成果が全くあげられないことになってしまう。
なぜ、このような「落とし穴」に陥ってしまうのか。その理由の多くは、大手企業の組織構造に問題がある。実は、C社も同じ問題を抱えている。
プライベートDMPの導入時によくあるフローは、情報システム部のようなインフラを司る部署が主導となるものである。お付き合いのある大手システム会社からインフラの改修と導入できるツールの提案を受け、1~2年かけてプロジェクトを進める、といった流れとなる。
しかし、情報システム部の目的は「どのようにデータを効率的に統合するか」ということで「戦略的なマーケティング活動」や「売上向上」といった意識が低い場合が大半である。
そのため、「現場がどう使うのか」「何に役立てられるのか」という観点があまり考慮されないまま要件定義が進んでしまい、いざ運用が始まっても現場やマーケティング担当者がうまく使えないという意見が非常に多い。