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COLUMN

壮大なビジョンもまずは小さなスタート!プライベートDMP導入時に陥りやすい「落とし穴」【後編】

ポイントは組織横断とパートナー選定

 この「落とし穴」を回避するためには、社内でどのように組織横断プロジェクトを進めるか、そしてどのようなパートナーを選ぶか、という2つの視点が非常に大切だ。

 まずは「こういう課題改善をしたい」という現場やマーケティング担当者の声を、要件定義にきちんと反映しなければならない。そのためには、現場やマーケティング担当者が「こうすれば業務改善が図れて、売上が上がる」といった起案をし、それを情報システム部が受ける、という体制であるべきだと考える。

 両者でコミュニケーションを取り、現場やマーケティング担当者が「業務改善」「売上向上」「使いやすさ」への期待感を持った状態で開発に取り組めば、現場のニーズが反映されたプライベートDMPが導入できる。そのため双方が起案に関わり、納得した状態で導入を検討するのが効果的だろう。

 さらに、細かいデータを分析したり、分析結果を判断するために必要なデータを選ぶ担当者が不在のため、結果として使えないプライベートDMPが導入され、現場が困り果ててしまうことがある。分析や戦略立案のスキルがない場合は、その分野に強いマーケティングパートナーに依頼するのもひとつの手段だろう。導入後、どのような戦略を実施すべきか一緒に考えてくれるパートナーを選定すべきである。

プライベートDMP導入は絶対に「スモールスタート」が良い

 ただ、組織横断的にコミュニケーションが取れたとしても、多くのシステム会社が提案するプライベートDMP導入にかかる費用が莫大であることに変わりはない。しかし、いきなり巨大なハコを入れるのはリスクが高い。まずは小さなテストで結果や可能性を残すほうが、自社にフィットした使えるプライベートDMPに仕上がるだろう。ここで該当するD社の事例を紹介しよう。

 D社は、BtoCで複数の事業を展開しているが、事業ごとの顧客データベースは別に管理されている。そのため、計画的なマーケティング活動が実施できていない。たとえば20代後半のニューファミリーに高齢者向けサービスのDMを送ってしまうなど、顧客への的はずれなアプローチが社内でも問題になっていた。

 事業ごとのデータベースを統合するため、プライベートDMPを導入するプロジェクトが始まった。情報システム部が大手システム会社と相談したが、提案された見積もりの金額は億円単位で、実施期間は2年と莫大な時間と金額が提示されてしまった。D社は短期で成果を求められる文化があるため、これでは社内の理解や追加費用を取り付けるのは難しかったようだ。

 しかし、いきなり全データベースを統合しなくとも、スモールスタートは可能である。目的は顧客に対して的確なアプローチを可能にするということなので、既存データの一部を統合するのみで業務改善を行うことも十分可能だ。これを軌道にのせてから、次の課題解決と順番に取り組めば、費用は最少で済み、短期間で効果検証もできる。

顧客に合ったコミュニーケーションの実現

 高級消費財を販売するE社も、大手システム会社から見積もりの提示があったが、プライベートDMPの導入が中断した企業のひとつである。莫大な費用と効果が見合うのかが、議論がわかれてしまったのだ。

 E社の課題は、見込み客のステータスに合わせた的確なコミュニケーションができていないことだ。初めて来店した人、すでに試したことがある人、競合の商品と迷っている人など、見込み客にはさまざまなステータスがある。

 例えば競合の商品と迷っている人には、営業担当者からセールスされるよりも口コミの説得力が増すこともある。オンライン・オフライン問わずそうした声を的確に届けられれば、コンバージョン率は格段に高まるだろう。ゴールはそのようなコミュニケーションを実現するプライベートDMPの導入だ。

 では、そのようなコミュニケーションを図るためにどんなデータや情報が必要か、システムありきではなくニーズありきで要件定義や業務設計を行うことが重要なポイントである。結果、現場がスムーズに使えるプライベートDMPを運用できるだろう。

 どのような成果を求めてプライベートDMPを導入するか。成果という目的が抜け落ちてしまった結果、莫大な導入費用の他に改修費用やコンサル費用とコストがかさんでしまう企業も少なくない。

 現場のニーズを設計に組み入れ、情報システム部とマーケティング担当者、そしてパートナーがしっかりとコミュニケーションを取る。そして既存データで小さなテストを繰り返しながら、自社に合ったプライベートDMPの姿を明確にすることが成功への近道である。自社に合ったプライベートDMPを導入、運用することで大幅な売上向上や業務改善、商品開発に活かすことができるだろう。

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この記事の著者

岡野 遵(オカノ ジュン)

株式会社アイ・エム・ジェイ Marketing & Technology Labs シニアコンサルタント。マーケティングインテリジェンス Unit マネージャー。1980年生まれ。大学卒業後、流通業にてFCチェーン店舗のSVとして加盟店契約、既存店販促支援、商品選定、PL管理などの業務を行う。

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※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2015/05/28 08:00 https://markezine.jp/article/detail/22449

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