マス広告からコンテンツ提供に転換、その理由は?
ボンカレーといえば、大塚食品が1968年に生み出した世界初の市販用レトルトカレー。40年以上もの間、多くの人々に親しまれています。しかし、近年ではレトルト食品のコモディティ化により、生活者にとって「知ってはいるけれど……」という商品になっている側面も否定できません。
そこで、同社は2013年後半から方針を大きく転換。従来のマス広告でのアプローチではなく、生活者の共感を呼ぶコンテンツ提供をはじめました。その結果、2014年の売上成長は120%を記録。これまでにない生活者との関係を築きつつあります。今回プロモーション施策を担当している大塚食品の垣内壮平氏にこれまでの取り組みと、狙いについて伺いました。
――キャンペーン戦略について、2014年と2013年での大きな違いを教えてください
垣内氏:端的に言うと、マス広告からコンテンツ提供を主体にしたPRにシフトしました。2013年までは、TVCMなどいわゆるマス広告を中心に据えた施策を展開してきました。ですが、その方法に限界を感じていました。昔はマス広告を打てば、店頭のPOSの数字が上がって(=売上が上がって)、施策は効果があったと判断ができました。現在はそのような図式になることはあまりありません。
具体的な話をすると、2013年にボンカレーゴールドはブランドのリニューアルを行いました。その際に「電子レンジ調理ができる」という機能性を前面に推したTVCMを展開しました。しかし残念ながら、2013年の前半の段階で、投資に見合う効果が出ませんでした。電子レンジ調理についての認知率も、上昇が見られなかった。
そこで、従来の手法以外にできることはないか考えるようになりました。そして、2013年の後半からプッシュ型ではなく、プル型のPRに力を入れる方針に転換しました。生活者の共感を得る、思わず買いたくなるトピックやコンテンツを作っていくことにしたのです。具体的な施策については、PRコンサルティング会社のビルコムさんと二人三脚で推進しました。
もう一度興味を持ってもらうためにどうするか
――具体的にはどのような施策を行ったのですか?
垣内氏:企業色を極力除いて、レトルトカレーが役立つシーンを描いた、商品の本質的な価値を伝える動画コンテンツを作りました。あわせて、音楽コンテンツを山崎まさよしさんに作っていただきました。内容は、共働きで子持ちの女性を主人公にしたものです。これは、生活者の日常でレトルトカレーを使いたいシーンはどのようなものかを考えたときに、「共働きの忙しいお母さん」の様子を切り取ることで、共感を持ってもらう意図がありました。
また、商品の開発段階から生活者のフック探しをして、それを踏まえた商品も作りました。ボンカレーでは夏と冬に季節商品を出しています。生活者に興味を持ってもらうという観点で開発をしました。加えて、ブランドサイトを用意し、コンテンツ拡充も進めています。
ボンカレーはロングセラー商品ですが、「10年くらい買っていない」という人も珍しくありません。商品の周辺環境を充実させ、それをきっかけに興味を持ってもらって、改めて使っていただくことを考えました。
その結果、動画の視聴回数は90万回を超え、Webサイトの流入は約3倍。売上全体でも120%を実現しました。この結果にはキャンペーン施策以外の要因も関わっていますが、費用対効果は出ているかと思います。