潜在層にアプローチし、新しい需要を生み出したい
MZ:オンラインの検索行動の増加でもブームの兆しは分かりますが、テレビ番組での紹介やその文脈を合わせて分析すれば、もっと手前の兆しを捉えられるということでしょうか?
山本氏:そうですね。簡単な例ですが、昨年に比べて肉を食べる機会は増えていませんか? 肉を扱ったイベントや熟成肉など「肉」が雑誌などで目立っているかと思います。実際、テレビ番組での紹介も増えています。すると肉への関心が高まって需要が増える。さらに紹介の文脈によって検索行動も変わってくるので、それらを総合的に分析して、潜在的なつながりを見つけ出し、LPや広告に反映することができます。
松永氏:自然言語処理などのテクノロジーを使ってブームの兆しを捉え、コミュニケーションに反映すれば、まだ自身が抱いているニーズに気付いていない人に気付いてもらい、購買などの行動を喚起できます。
マスメディアを含めたコンテンツマーケティングのようなイメージですね。山本さんとの取り組みの背景には、先ほどお話ししたメリット以上に、新しい需要を生み出たいというビジョンが合致していたことがあります。
山本氏:消費を促すには「モノ」を推すだけではなく、モノが欲しくなる事柄、文脈をつくる「コトづくり」が重要です。この2つが掛け合わさったときに爆発的なヒット商品が生まれている。私は、日本はモノづくりだけでなく、細やかなコンテンツ制作などによるコトづくりにも長けていると思っています。テレビ×デジタルのデータ活用で、コトづくりを科学的に起こせるのではないかと考えているんです。
精度の高いデータからキーワード同士のつながりを見つける
MZ:具体的に、どのような分析や施策が可能になっているのでしょうか?
山本氏:テレビ番組で登場するものや、オンライン検索といったオーディエンスデータなどを含めて、キーワード同士の関係性を可視化することができます。これらに、クライアントから提供が可能なら属性や購買データなどを掛け合わせて、LPOツールなどを使ってコミュニケーションを最適化すれば、コンバージョンの向上が見込めます。
松永氏:このときに大事なことは、データの精度です。テレビ番組でスポーツ飲料が紹介されたとき、じゃあスポーツ飲料のバナーを出そうと判断するのは簡単ですが、それだと広がりがありません。テレビでその商品がどのような文脈で取り上げられたのかといった、データとして扱いにくい情報をしっかり構造化できて初めて、一般生活者がピンとくるつながりを見つけ出せるようになります。
山本氏:例えば、夏場はテレビで「熱中症」が繰り返し取り上げられます。分析すると、熱中症とスポーツ飲料との間には「塩分補給」「ナトリウム」といったキーワードが挙がってくるので、これをブリッジさせればユーザーに響きやすくなりますよね。
このレベルなら誰でも考えつきますし、実際に熱中症に関連した訴求で売上を伸ばした商品もあるようです。ですが、担当するすべての商品で可能性のある文脈を見出すのは難しいと思います。そのあたりを、科学的にかなりアシストできるようにしていきたいと考えています。